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今週の一本

●どこまでいくのか低価格化  越川宏昭 (週刊冷食タイムス:09/05/12号)

安売り常態化、PB商品台頭
消費者満足には技術革新が不可欠

安さよりおいしさを
冷食なら対応可能

 冷凍食品業界は低価格化の荒波にさらされている。ナショナルブランド(NB)における全品四割、五割引販売の常態化、スーパーやCVSにおける低価格のプライベートブランド(PB)の増加、いずれも圧倒的なバイイングパワーのもとにNBメーカーの存立が足元から揺らいでいる。

 スーパーの全品特売はもはや日常化し、業界でもあまり話題にならなくなった。不当な安売りだと抵抗するメーカーは皆無。抵抗すれば商品カット、他のメーカーの類似商品を並べることになる。カットされてもブランド価値の高い商品は他社商品では代替できない。ただ、そういう商品はこと冷凍食品に限っては希少である。長いものには巻かれろと安売りを黙認する。あるいは安売りを利用して工場稼働率の向上を図るというのが業界の現状ではないか。
 しかし、低価格化の進行はメーカーにブランド価値を厳しく問う状況に至っている。スーパーやCVSが売り出す100円均一シリーズ、今後大手チェーンはここに重点していくことになりそうだ。一体100円商品で小売も問屋もメーカーも利益を出せるのか。研究開発、品質・安全安心の向上などにその利益を向けることができるのか。消費者が満足できる商品を持続的に供給できるのか。この点は大いに疑問である。
 冷凍食品メーカーで長年活躍したOBのM氏に市販用冷凍食品のコスト構造を聞いたところ、100円の商品ならばメーカー蔵出しコストは40円〜45円だという。このうち包材・工賃が25円かかる。とすれば残る食材コストは10円〜15円。たかが10円の食材コストで消費者を満足させられる商品に仕上げることができるのか。冷凍食品はサプリメントや飲料とは違う。いくら加工技術が優れていても、商品価値の基本は食材の質量次第で決まる。
 昨今のPB商品の製造者は有名メーカーが名を連ねている。しかも製造者欄にはメーカー名を表示するケースが増えている。有力メーカー名が表示され、しかもアイテムは業界を代表する売れ筋商品である。違うのは価格。NBの同類商品より二割前後は安い。これはPBによるNBへの挑戦である。また、見方を変えればNBの自縄自縛といえないか。
 価格が高いNBはPBとの価格差を購入者にどう納得させるのか。しかもそれは商品自身に語らせなければならない。購入者がこの味ならNBでも高くない、この機能性なら便利だから高くてもNB商品を使いたいと納得できること。今まで以上に価格と価値のバランスが厳しく問われているのが現状だ。
 PBがNBを席巻するだろうか。消費者の低価格化への要請が強く、当面はPBの市場拡張が続くだろう。ただ、それには限界があるはずだ。
 日本人は味に敏感である。使い勝手にうるさい。世界でもっとも食にデリカシーをもつ国民である。そこがむずかしいところであると同時に冷凍食品業界にとってはチャンスでもある。PBとの違いを明確に打ち出せる商品を提供していけば、必ずや消費者の支持を得られるだろう。

イノベーションが重要
 そこでポイントになるのがイノベーションである。いかに味や出来栄えで差異化するか、そこにメーカーによるイノベーションが必要。単なる技術革新にとどまらず、新しい発想の取り込みであり、既成の発想を打ち破る斬新さ、創造性を盛り込むことが必要。
 ユニクロは不況で低迷する衣料品業界で一人勝ちを収める好調ぶりである。なぜユニクロが躍進し、他社が容易に追随できないのか。それは軽くて暖かい、肌に心地いい素材を繊維会社や製糸メーカーとタイアップして開発したためだ。素材を商品化する技術や低コストで製造する生産体制なども卓越しているが、なによりも素材開発が重要だ。
 これからNBが生き残るためにはイノベーションが欠かせない。研究開発部門が蓄積してきた技術をどれだけ差異化した商品の開発提案に注ぎ込めるか。メーカーの真価が問われることになる。

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