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●マルハニチロ 養殖の高水温対策を強化 松田陽平 (週刊水産タイムス:25/07/07号)河田常務ら方針示す/国内シェアを平均15%以上に
水産資源セグメントの漁業ユニットは事業の選択と集中による構造改革を行う。河田常務は「収益性の高い魚種の扱いを増やし、設備投資などにより操業効率を高め、収益力拡大に努める」と方針を示した。 ニュージーランド(NZ)海域に今年3月新船を投入し、ミナミダラやホキ、アジ、シルバーなどの漁獲拡大を図る。新船投入により最高品質のミナミダラスリミの生産は倍増する。また、カツオを対象としたミクロネシア海域、メロを対象としたオーストラリア海域にも新船を投入する計画。各エリアで漁獲管理された持続可能な漁業を展開する。 養殖ユニットは国内15の養殖場で出荷数量1万1000tを誇る。そのうち、クロマグロは4200tで国内シェア1位(シェア25%)、カンパチは3100tでシェア1位(同13%)、ブリは3800tでシェア4位(同4%)。 クロマグロは短期蓄養を拡大 マグロ養殖では、餌料効率の高いクロマグロの短期蓄養を拡大している。契約したまき網船が漁獲した100kg前後のクロマグロを短期間養殖して出荷。2027年に150t規模まで拡大する計画。新たな漁場を確保し、さらに増やしていく。 27年にスギを約10万尾出荷予定
スギは高水温耐性があり、稚魚投入から約1年間で出荷サイズ(約5〜6kg)まで育つ養殖期間の短さが強み。海外輸出も視野に入れる。同社は技術開発を継続し、今後事業規模を拡大。27年に約10万尾の出荷をめざす。 新たな養殖漁場の開拓も進める。同社は昨年11月に静岡県沼津市の養殖会社に資本参加。河田常務は「大消費地の関東に近く、水温環境としても今後優位性のあるロケーションとなる。現在はマダイ中心に養殖しているが、ブリへの魚種転換を図り、生産を拡大する」と説明した。 富山県入善町で計画している三菱商事との合弁事業であるサーモンの陸上養殖については、2024年1月の能登半島地震に伴う建築資材の高騰や人手不足などにより、当初の計画が2年ほど遅れる見込み。現時点では2027年稼働開始、29年の初出荷をめざす。 NBWのスリミを日本で販売
河田常務は「しなやかさが強く、最近のねり製品の食感に合うスリミ。加水ができるのでコスト削減にもつながる。製造ラインを刷新し、当社社員の技術指導により白度が高まり、カニカマの原料に最適。25年度中にフル稼働する予定」と説明した。 農畜水産・加工品をBtoBのすべてのチャネルに供給する食材流通セグメントの課題として、熊本常務は不安定な供給と人手不足を挙げた。 水揚げ数量の伸び悩みや海外市場での魚食需要増加、円安による魚価上昇などを背景に水産物の供給が不安定化。2019年を100とした主要水産物(ノルウェーサバ、チリギン、バナメイなど)の魚価は約1.5倍に上昇している。 水産商事ユニットは世界各国の調達先との関係強化に努めてきた。現在、主要魚種における国内シェアは平均10%だが、27年までに全魚種平均15%以上のシェアをめざす。 また、安定供給を実現するため、2030年をゴールとして▽資源枯渇リスク確認率100%▽MSCやASCなどの認証取得済み商品売上げ15%超――という水産物の持続的な調達に関する2つの目標を掲げている。 同社が買い付けシェア1位(18%)を誇るエビの扱い(年間約4万t)についても、2030年までにさらにシェアを拡大し、認証取得済み商品の割合を25%以上にする計画。 そのほか、加工工程で出る端材を活用した骨取り無塩切身「もったいないシリーズ」を販売するなど、貴重な水産資源の有効活用に貢献する。 調達力と加工技術の強みを融合 食の外部化が進む中、現場での働き手不足は深刻で、作業効率を改善する商品提案が求められているとして、自然解凍、湯せんするだけの簡便業務用水産商品を紹介した。 |
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