この人に聞きたい:第985回
(週刊冷食タイムス:25/06/10号)
高品質が輸出事業のカギ
(株)カラミノフーズ 代表取締役社長 佐藤 淳一氏
(さとう・じゅんいち)学生時代はバックパッカーとして世界中を巡った。旅行ガイドブック出版社を経てキムチメーカーを起業。製造委託先の声掛けで1993年に同社を立ち上げ、現職。59年7月18日生まれ、65歳。東京出身。
日本のグルメを世界へ輸出
冷凍食品メーカーのカラミノフーズはきりたんぽやほうとうといった「日本のグルメ」を輸出する事業に取り組んでいる。日本の冷凍食品や冷凍技術の質の高さは強みになると語っている。
――「日本のグルメ」の輸出事業について聞きたい。
佐藤 今まで「世界のグルメ」を日本の市場に発信する事業をメインに取り組んできましたが、日本市場は今後シュリンクする可能性が高く、「日本のグルメ」や「日本の高い品質」を輸出するのも面白く、会社の成長にとって重要だと思い、挑戦しました。
――輸出の状況は?
佐藤 まだ本格的な輸出は開始していません。生協で「日本のグルメ」をテスト販売しています。日本人と外国人の味覚は違いますが、国内での反応を注視して、輸出のチャンスを窺います。
――日本の冷凍食品の強みは?
佐藤 品質の高さです。例えば、韓国風のりまき「キンパ」は韓国企業が安い冷凍食品をアメリカに輸出しています。「安さ」では戦えませんが、「高品質」ならば勝負できると思います。
――外国人のし好に近付ける?
佐藤 はい。品質が高くても、その国の人の舌に合わず、売れなかったら意味がないと思うので、各国によって味を変えるのは重要だと思います。
――輸出事業の難しさは?
佐藤 アメリカは肉などの規制がとても厳しく、日本から輸出するとほぼ規制対象になります。特に、冷凍食品は内容物が多いのでアメリカへの輸出のハードルが高く、成功事例は100件中1件の割合だと感じています。いくら高品質でも、規制の壁を越えないと販売できません。
――国内で発売している「世界のグルメ」のニーズに変化は?
佐藤 売れる商品は限られていると感じます。日本人がよく知っている国・料理でないと中々購入してくれません。例えば、同じアジアでも韓国やタイは代表的な料理が想像できますが、カンボジアは思い付きません。また、タイ料理でも消費者が知っている料理でないと売れないので「知っている国の知っている料理」を選択するのは重要です。
――2023年に創業30周年を迎えた。
佐藤 成功する可能性が低くても商品開発に挑戦する姿勢を30年間大切にしてきたので会社が存続できたと感じます。他人に『その食品を冷凍化するのは厳しい』と言われると、商品化への意欲がより高まります。