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今週の一本

●新政権に戸惑う水産業界  辻雅司 (週刊水産タイムス:09/10/12号)

民主党とのパイプ作りへ
当面は漁業所得補償制度が焦点

マニフェスト検証
 民主党政権における水産政策の行方に業界が注目している。選挙前の民主党マニフェストでは、水産漁業を国民の食料確保における重要な産業と位置づけ、漁業所得補償制度の創設や漁村集落の活性化、商業捕鯨再開、水産物のトレーサビリティの確立を掲げている。また、今年度の補正予算の見直しでは、水産関連では大きな影響はなかったが、基金造成し未消化となっている予算には返還を原則としていることから、いくつかの基金の積み立てで今後、返還の要求も予想される。
 民主党のマニフェスト(政権公約)には水産業について、資源管理の強化と「漁業者所得補償制度」の創設や漁村集落の活性化、養殖業・内水面漁業に対する支援、水産に関するトレーサビリティ(追跡可能性)システムの導入、捕鯨対策、農山漁村の「6次産業化」が盛り込まれている。
 まず、資源管理の強化と「漁業者所得補償制度」の創設では、日本の漁業は水産資源の状況に比べ、漁獲量が過剰の状態にあり、両者のバランスを確保するため「個別漁業者ごとの漁獲可能量の割当て(個別TAC)」と「資源管理計画」制度を導入し「漁業所得補償制度」を創設する。国民への食料安定供給の責務を担っていることを勘案し、生産に要する費用と漁業収入との差額を基本とする交付金を交付する。また、適正な資源管理を行う上で必要となる休漁、減船については、漁業所得補償の水準をベースに補償を実施するとしている。
 また、漁村集落が行う海浜の清掃、稚魚の放流等の取組みに対して、「漁村集落直接支払(仮称)」を実施する。また、水産資源の回復と多面的機能の発揮のため、森林の保全・整備のほか、「海の森構想」等の積極的な推進により、藻場、干潟を造成する。
 
水産トレサ拡充、商業捕鯨再開も
 さらに、適正な資源管理の実施、安全・安心を担保するため、水産に関するトレーサビリティシステムを導入する。輸入水産物については、国産と同程度の資源管理を行っているものだけを輸入することにより、違法・無報告・無規制(IUU)漁業の根絶を図る。養殖業・内水面漁業に対する支援を行うほか、捕鯨では、十分な資源量が確認された種の鯨類は適切な管理を行うことを条件に、商業捕鯨の再開を図る。なお、調査捕鯨はIWC条約8条に基づく正当な権利である。
 
農山漁村を6次産業化
 一方、農山漁村では、農林漁業を中核として、加工・製造業、卸・小売業、飲食業、情報サービス業、観光・宿泊業など、さまざまな産業が営まれている。こうした農山村において(1)農林漁業サイドが加工(2次産業)や販売(3次産業)を主体に取り込むことや加工・販売部門事業者が農林漁業の参入する(2)1次、2次、3次産業の融合に新たに取り組む「農山村の「6次産業化」を図り、新たな業態を創出する(3)そのためには、財源と権限の地方への譲渡、金融、税制、補助金、規制の見直し等、総合的かつ一体的に実施する。なお、WTOにおける貿易自由化協定や各国とのFTA締結の促進を両立させる。

農協・漁協は政治的中立の確保を
 そのほか、農協、漁協、土地改良区、森林組合の健全性、透明性を確保する。また、政治的中立を確保するほか、組織が活発に設立されるよう、条件整備を図る。

自民一本槍から脱却
政策握る副大臣と政務官
 これまで水産業界は、自民党を支持政党として自民党水産部会との太いパイプで関係を結び、水産政策は政治主導で展開されていた。しかし、民主党政権が誕生し、方程式が大きく崩れた。
 JF全漁連では「自民党から民主党に政権が変わったとしても、水産業や漁業の重要性は変わっておらず、民主党のマニフェストにおいても、漁業所得補償制度の創設や漁村集落の活性化を政策で掲げている。新政権を担う民主党の国会議員への働きかけを行うとしているが、自民党のような部会を設けないことから、どの国会議員に働きかけや要請を行えばよいのか、とまどっている」としている。
 また、「各議員の先生に水産や漁業の話をしても、まき網とはどんな漁法であるかといったことから説明をしなければならない」と水産業のイロハから知ってもらわなければならないという。このため、全漁連では、水産業や漁業について分かりやすく理解してもらうための読本を作成。
 別の魚種別団体では、「中央団体としては、これまでの自民党一本槍だったことから、あえて進んで民主党への働きかけはしていない。しかし、地方の漁業者は、地元の民主党国会議員とは積極的に接触をしてほしいと要請している。また、逆に民主党議員から漁業者の方に接触してきており、現場での政策要望を伝え始めている」としている。
 一方、農水省では、大臣や副大臣、政務官との政策協議が開始されている。民主党では水産部会は設けないが、副大臣と政務官の4名が中心となり、各産業別の政策協議会を開催。これに関心のある民主党の国会議員が任意の参加、それぞれテーマごとに意見を述べる。政策協議会は政務官が司会者となり、副大臣は意見を聴取。その後、副大臣と政務官は協議会での議論を意見集約し、農水大臣に実行すべき政策を提言し、最終的に大臣がこれを判断、行政に政策を指示するというもの。
 自民党の政調会の事務局にあたる民主党のスタッフは農水関係で3名しかおらず、水産の専任スタッフはいない。また、副大臣、政務官のうち、水産の担当は山田副大臣といわれているが、はっきりとしていない。

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