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今週の一本

●ウナギ人工種苗実用化へ前進  松田陽平 (週刊水産タイムス:14/02/17号)

水産総合研究センター

1000リットル水槽で育ったシラスウナギ
 水産総合研究センターは、これまで難しいとされていた大型水槽を使ったニホンウナギふ化仔魚の飼育に成功したことを発表した。同センターの和田時夫理事は人工種苗(シラスウナギ)の大量生産や完全養殖ウナギの安定生産に向けて「一つの大きな壁を破ることができた」と語った。

 同センターでは平成10年にウナギ仔魚(レプトセファルス幼生)用飼料としてサメ卵(アブラツノザメ)の凍結乾燥粉末が有効であることを明らかにし、14年には卵から育てたウナギ仔魚をシラスウナギに変態させることに世界で初めて成功。22年には人工生産ウナギを親とした“完全養殖”に成功するなど、ウナギの人工種苗生産や完全養殖の先進的な研究開発に取り組み、実績を残している。

 これまでのウナギ仔魚の飼育では、5〜20リットルの小さな透明アクリル水槽を利用していた。仔魚の生存率を上げるために、細菌の付着・増殖を防止する水槽交換を頻繁に行う必要があり、サイホンやピペットなどを使って仔魚の移し替えを行っていた。1水槽あたり数十尾という小ロットでの生産に限られる上に、水槽交換、給餌など手間のかかる点が実用化に向けた大きな課題となっていた。また、仔魚を視認できる透明な小型水槽を使わざるを得なかった。

 今回新たに開発した飼育技術(特許出願中)では、従来よりもはるかに大きい1000リットル規模の不透明な塩化ビニル製の大型水槽を使用。かまぼこを逆さにした形状の1000リットル水槽2基をつなぎ合わせた飼育水槽に、昨年6月約2万8000尾のウナギふ化仔魚を収容し、飼育を開始。昨年12月25日時点で200日齢の約900尾の仔魚を飼育しており、2月11日時点で25尾がシラスウナギに変態した。

 和田理事は「人工種苗の大量生産に向けて大きく前進した」と手応えを感じながらも、まだまだ課題は多いと語る。

 仔魚からシラスウナギへ変態するまでの生存率は「既存の方法とそれほど変わらず、悪くないレベル」(増田賢嗣主任研究員)。今後は生存率の向上を図ることや効率的な給餌方法の開発などが課題だ。

 大型水槽によるコストメリットは大きい。「今までの飼育方法では20リットルのアクリル水槽が50基必要だったが、大型の塩ビ水槽(1000リットル)であれば1基で済む。コストも安く、飼育する手間も大幅に軽減される」(和田理事)。

 今後の目標は「1基の大型水槽で約1000尾、1尾あたり1000円を下回るレベルで生産しないと使ってもらえない」(同)としている。

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