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今週の一本

●“陸上養殖”時代始まる  栗原浩太 (週刊水産タイムス:20/01/01号)

 天然魚の漁獲量や資源量の減少を背景に、自然環境に左右されにくく計画生産が可能な“陸上養殖”への関心が高まっている。そのような中、新たな取り組みが始まった。陸上養殖漁業協同組合(愛知県名古屋市)が今月にも登記を済ませ、正式な設立を迎える。

鮮やかな黒色の「きよらエビ」
漁業協同組合設立へ

 生産の主軸は閉鎖循環式陸上養殖で育てる「きよらエビ」(バナメイエビ)。稚エビのほか、同ブランドの要となる独自の飼料や人工海水の原料を漁協で一括仕入れすることで生産コストを下げ、消費者が購入しやすい適正価格での大量生産、安定供給をめざす。
 「きよらエビ」はHighland Farm(ハイランドファーム)東濃(岐阜県瑞浪市)が2017年にブランド化した生食可能なバナメイエビ。強い甘みと独自のノウハウによる鮮やかな色味、薬品を一切使用しない安全性を特徴とし、現在は名古屋市内の大型スーパーを中心に「きよら美濃エビ」の名称で販売している。 組合員は飼料や生育環境などの基準を満たした上で、地域名などを入れた「きよら○○エビ」の名称で販売を行う。きよらエビの育成は強制ではないが、供出量の目安として生産量の25%を掲げている。
 伊藤浩組合長は「陸上養殖といえども何らかの要因により計画的な生産ができない事態も想定できる。単独による大量生産・供給はリスクが高い」と指摘した上で、「生産者が連携し、漁協組合として供給量を調整することで、安定的な販路が確保できる」と漁協設立のメリットを強調する。今後は冷蔵に加え、IQF(急速個別冷凍)技術を活用した広域流通も検討。国内エビ消費量の1割の生産体制確立をめざす。
 立ち上げ時の組合員数は約17社。人材派遣やホテル、商社など異業種からの参入が大多数を占める。小規模かつ短期サイクルで生産が可能なバナメイエビ養殖は異業種企業の新規事業として魅力的であり、今後も組合員数の増加が見込まれる。

IoTの力で生産性を向上

 テクノロジーの力でさらなる生産性の向上も期待される。ハイランドファーム東濃はIoTサービス事業のウフル(東京都港区)と自動車部品大手の日本特殊陶業(名古屋市)と連携し、バナメイエビの養殖支援システムの実用化を進めている。ウフルのソフトウェア技術と日本特殊陶業のセンシング技術を活用し、水温や酸素濃度、塩分濃度のほか、アンモニア、ミネラル(カルシウムやマグネシウム)など環境管理に必要な成分をセンサーで分析。IoTシステムにより見える化するものだ。
 伊藤組合長は「きよらエビの育成で最も難しいのは水質管理。間違えば身質が悪化するだけでなく、共食いが増えて歩留りが低下する。それをサポートするシステムの存在は異業種からの参入が多い当協会にとって大きなプラス」と評価する。ハイランドファーム東濃のほかにも複数の組合員が同システムを導入予定とのこと。ウフルの資材発注や業務管理システムもワンパッケージで提供する予定。

黒くて赤いエビ

 一般的な白っぽい体色のバナメイエビと異なり、「きよらエビ」は鮮やかな黒色で出荷される。特殊な飼育環境により、意図的に外殻を黒くすることで、生食時の身は透き通った透明色に、加熱時はあざやかな赤色となるように工夫。薬品は使用せず、保護色など自然の作用により理想の色味を実現した。メラニン形成による黒変対策にも有効で歩留り向上にもつながる。
 味へのこだわりも強い。バナメイエビは淡水でも飼育可能だが、うま味成分を増やすため人工海水を選択。塩分濃度もヒトによる食味試験をもとに微調整している。餌は水質維持を考慮し、植物性たんぱく質を豊富に配合したものを使用する。

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