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今週の一本

●キユーピー、アレルゲン含まない鶏卵作出  佐藤巳喜夫 (週刊冷食タイムス:23/05/09号)

広島大学と共同研究 安全性を確認、世界初

 キユーピーは鶏卵の主要アレルゲンである「オボムコイド」を含まない鶏卵を作出し、その安全性を世界で初めて確認した。広島大学と共同研究した。加工適性等が証明されれば、冷凍食品の原料としても期待できる。

 鶏卵は食物アレルギーの一番の原因物資(約33%)となっている。そのアレルギー物質は卵白に含まれるタンパク質(オボアルブミン、オボトランスフェリン、オボムコイドなど)と言われるが、オボムコイド以外のタンパク質は熱に弱いため、充分に加熱すればアレルゲン性が低下する。
 しかしオボムコイドは熱にも消化酵素にも強い。
 そこでオボムコイドを含まない鶏卵を作出できないか、広島大学と2013年から基礎研究を続け、20年にはラボレベルで作出に成功している。
 オボムコイドを含まないアレルギー低減卵はゲノム編集により鶏の受精卵のオボムコイド遺伝子の働きをねらって止め、その後ふ化した鶏が成長し、交配・産卵することで作出される。
 ゲノム編集に当たり、広島大学が独自開発した高活性型のPlatinum TALEN(pTALEN)の技術を使い、鶏のオボムコイド遺伝子の働きを止めることに成功した。
 このアレルギー低減卵を食品として利用するにはゲノム編集による副産物や、標的以外へのゲノム編集の影響を解明し、安全性を確認する必要がある。
 そこで広島大学を中心に研究解析をした結果、作出したアレルギー卵にはオボムコイドも副産物も含んでいないことが証明された。
 ゲノム編集により別の遺伝子の挿入や他の遺伝子への影響も全くないことが明らかとなり、世界で初めてその安全性を確認できた。
 この研究成果に関する論文は、学術誌「Food and Chemical Toxicology」23年5月号に掲載される。
 今回の成果はキユーピーが13年から進めてきた広島大学との基礎研究から生まれたが、現在は応用研究フェーズに移っている。応用研究のポイントは@有効性評価A育種造成B物性・加工適正評価。
 キユーピーは有効性評価に関し国立病院機構相模原病院と「臨床試験」に取り組んでいる。アレルギー低減卵を使った血清試験と患者による喫食試験を行い、有効性を確認する。
 同社は物性・加工適性評価についても、凝固性、起泡性、乳化性などの加工適性がアレルギー低減卵にも同等にあるのかなど、食品への利用の可能性を探る。今年度中にその成果を学会で発表する見通しという。
 キユーピーは卵アレルギーで苦しむ人をゼロにするため、特定原材料不使用のベビーフード、卵を使わないマヨネーズタイプ風味調味料、卵を使わないプラントベースフード「HOB○TAMA」などを開発した。
 このニュースはテレビ報道番組や新聞など多くのメディアが取り上げ、鶏卵アレルギー対策に関心が高いことを示した。

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