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今週の一本

●AI活用で魚の品質規格標準化へ  松田陽平 (週刊水産タイムス:23/12/18号)

ソフトバンクらがコンソーシアム

 ソフトバンク(東京都港区)は魚の価値の向上をめざし、魚の鮮度や旨みの測定手法の確立に向けた「品質規格標準化プロジェクト」を開始する。同プロジェクトの実現に向けて、養殖業者の赤坂水産(愛媛県西予市)、愛媛県産業技術研究所、飼料メーカーのフィード・ワン(横浜市)、宅配寿司などを展開するライドオンエクスプレス(東京都港区)とコンソーシアムをこのほど設立した。

愛媛県デジタル実装加速化PJ/マダイのおいしさを見える化

コンソーシアムに参加する
企業のメンバー
 同プロジェクトは、愛媛県のデジタル実装加速化プロジェクト「トライアングルエヒメ」の2023年度の採択案件となっている。
 「情報革命で人々を幸せに」を経営理念に掲げるソフトバンクは、2020年から養殖業の課題解決に向けたスマート化の取り組みを行っている。
 同社のIT統括IT&アーキテクト本部アドバンステクノロジー推進室の須田和人室長は13日開催した説明会で、現在の養殖業の課題について「勘や経験などによる養殖経営から脱して、AIなどのテクノロジーを活用することでリスクやコストを抑えることが重要。また、品質規格についても、牛肉やコメ、果物には等級のようなものがあるが、魚には統一された品質規格がない」と指摘。また、長距離での鮮魚の運搬がより困難になる可能性がある物流の2024年問題に対応するため、「おいしい冷凍魚を作り、品質を落とさずに輸送する仕組みを構築すべき。将来的には輸出拡大につながる。養殖のスマート化の成功モデルとして海外にも広げたい」と語った。
 今回設立したコンソーシアムでは“おいしい魚”の定義と“冷凍に向いた魚”の定義を明確化する。
 魚の旨みの評価方法については化学的分析(破壊検査)と近赤外分光センサーによる非破壊検査、官能評価により行い、それらのデータを基にAIで機械学習モデルを生成し、「魚の旨みの新たな規格作り」「おいしい冷凍魚のための規格作り」「リアルタイムで魚の鮮度、旨みを測定する新しい手法の確立」を行い、魚の品質規格標準化をめざす。

赤坂水産が育成方法や締め方など検証

 赤坂水産は冷凍に適した魚の育成方法や締め方、加工、冷凍のタイミングなどを検証。赤坂水産の赤坂竜太郎取締役は「食べる人の好みに合う魚を作るべき。冷凍魚が活魚以上においしく食べられる方法を追求する必要がある」と語った。
 愛媛県産業技術研究所とフィード・ワンは、鮮度を示すK値や遊離アミノ酸などの化学的分析を行い、旨み成分について研究開発を行う。また、フィード・ワンは冷凍に適した養殖魚を育成する専用飼料を開発する。
 フィード・ワンの山上浩史上席執行役員は「魚には品質に関する格付けがなく、差別化を実現しても付加価値が伴わない」と水産業の課題を挙げた。
 ライドオンエクスプレスは魚の締め方や時間経過(熟成)、凍結方法による食味の違いなど、官能評価の方法や指標作りのためのアドバイスを行う。
 まずはマダイにおけるおいしい冷凍魚のための規格作りと、その測定方法の確立をめざす。将来的には、ブリやマグロなど他の魚種についても規格作りと測定方法の検証を行う方針。
 愛媛県の「トライアングルエヒメ」は「デジタル企業の成長」「地域事業者の稼ぐ力の向上」「愛媛県(地域)の発展」の「三方良し」をめざした事業。事務局を務める愛媛県企画振興部スマート行政推進課の水越康寛氏は「今回のコンソーシアムの実現性と持続性に期待している」と語った。

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