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今週の一本

●地球環境への配慮不可欠  高橋尚徳 (週刊冷食タイムス:24/02/27号)

ニチレイフーズ タイの生産拠点 GFNは鶏1羽すべて活用

 ニチレイフーズのチキン加工品を生産するタイのスラポンニチレイフーズ(SUNIF)は廃食用油のバイオ燃料化やプラスチックフィルムの回収など、地球環境に配慮した取り組みを進めている。GFPTニチレイ(GFN)は鶏の肉以外に骨、羽、頭、血液など余すことなく活用し、廃棄ロスを最小限に抑える体制を構築している。生産性の向上と合わせて、地球環境への配慮が不可欠になっている。SUNIFのテパラク工場とGFNの2工場を取材した。
 SUNIFのテパラク工場(サムトサコーン県)は1988年設立、翌年稼働を開始した。当初は合弁相手のスラポンフーズがえびを強みにしていたため、えびを中心とした水産加工品を手掛けていた。その後、原料調達が困難になったため、94年からチキン加工品の生産にシフト。19年に家庭用の主力品「特から」の専用工場に生まれ変わった。バンコクから約30kmと都市部に近い位置にある。
 原料はカットした状態で仕入れ、独自技術の高感度X線検査ロボットで硬い骨を確実に排除し、さらに赤身、羽、夾雑物を目視で選別している。
 「特から」の特徴は独自製法の「三度揚げ(トリプルフライ)」。一度揚げで表面に火を通し、余熱を利用した後、二度揚げで旨みを閉じ込める。再度、余熱を活用し、三度揚げで衣をカラッと仕上げる。油の温度、揚げ時間はフライヤーごとに細かく調整し、それぞれの最適な使用期間で油を入れ替えているという。
 工場から出る廃油は2023年実績で1197t。これをバイオディーゼル燃料用に販売し、リサイクルしている。併せて、従業員の家庭で排出される廃油を年間733L回収した。使用済みサラダ油3Lを持参すると、新品の油1Lと無料で交換する仕組みが従業員の参加意欲を高めている。
 工場の屋上に太陽光発電設備を年内に設置する予定。
 「特から」は2022・23年の調理冷凍食品全体の中で単品売上げベスト5に入る人気商品。18年3月〜22年9月の冷凍調理から揚げ市場の中では売上げbP商品。パッケージに「売上bP」と表記している。
 ニチレイフーズの松尾哲哉取締役専務執行役員は「チキン加工品にシフトした当初は価格が高いと言われ苦戦したが、2〜3年後には品質や簡便性の高さ、衣の食感・肉のジューシーさが認められるようになり、今に至っている。R&Dを含め、世界一の加工技術を持つチキン加工場と自負している」とコメントしている。

「特から」は余熱を利用しているのが
特徴
GFNは1日15万羽の鶏を処理

 GFN(チョンブリ県)は2010年7月に生産を開始したチキン加工品の大型工場。鶏処理場、加熱加工場を直線的にレイアウトし、全長が1kmある。1日の鶏の処理数は15万羽。バンコクから東南東に約130km、車で1時間半の距離にある。
 合弁相手のGFPT社はタイの養鶏加工大手。工場の周辺に養鶏場を展開し、GFNで加工する鶏を全量供給。鶏の飼料は同社が自社生産している。
 GFNの工場は2ラインでスタートしたが、段階的にラインを増設し、現在は第二工場と合わせて計7ライン。凍結能力(生産能力)は1日当たり144t。第二工場には増設スペースがまだある。業務用を中心に200アイテム弱を生産している。家庭用は「むねから」1品のみ。
 すでに骨と肉に分離するロボット「トリダス」で省人化を図っているが、肉を決められた重量にカットするのは人手に頼っている。自動カット機も併用しているが、まだ人手の方が精度は高いという。
 橋山暢祐副社長は「この先、労働者はもっと集まりにくくなる。その時になって機械を導入していては遅い。今のうちからノウハウを積み上げている」と語っている。
 工場の従業員はピーク時に5600名いたが、現在は当時より2ライン多い状態で5400名にとどまっている。

動物福祉の視点で鶏を扱う

 GFNでは、感受性を持つ家畜に対し、可能な限りストレスを与えず、健康的な生活ができるように飼育する畜産のあり方「アニマルウェルフェア(動物福祉)」の視点を取り入れている。鶏むね肉の加工品を輸出している欧州はアニマルウェルフェアに対する意識が高い。 
 また、働きやすい環境づくりの一環で、従業員を直接雇用している。仲介業者が間に入っていない分、従業員の手取りが増える。従業員5400名のうち、3800名がカンボジア人だが、同一労働、同一賃金を採用している。
 工場のすぐ隣に従業員宿舎が12棟あり、4200名が利用している。
 従業員宿舎のすぐそばには常設市場があり、食事はもちろん、衣料品など暮らしに必要な品がほぼすべて手に入る。託児所、ATMもある。運動場には最近、屋根を設けた。
 環境面では昨年10月に太陽光発電設備を設置。15%の電力を賄っている。

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