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今週の一本

●インド市場に大きな可能性  橋本武寿 (週刊冷食タイムス:26/02/17号)

モダントレードが拡大

 農水省事業インド現地官民ミッション団の一員として、デリーとグルガオンを今月初旬に訪問した。行政機関から物流施設に至るまで訪れ、実態を確認した。都市部ではモダントレードが拡大し、冷凍食品の取り扱いが増えている。日本の冷食産業にとってインドは「次の巨大市場」になりうると実感した。

デリーにある小売店の冷凍食品売場
 ミッション団の派遣は、農水省が掲げる「農林水産物・食品の輸出額5兆円(2030年)」という国家目標の達成に向け官民が一体となって海外市場の実態を把握し、現地の行政・企業とのネットワークを構築する政策的取り組みの一環。インドは人口世界最多、平均年齢28歳という若年人口構成を背景に、加工食品や外食市場が急速に拡大している。日本の冷凍食品産業にとってインドは「次の巨大市場」となりうる。今回のミッションはその可能性を探る重要な機会となった。
 デリーの在インド日本国大使館を最初に訪問し、同館職員とJETROニューデリー事務所駐在員からインドの政治・経済情勢、産業政策、食品市場の最新動向について包括的な説明を受けた。人口14億人を超え世界最多の人口を持つインドは、24歳以下が人口の54%を占める極めて若い人口構成を背景に、食需要が急速に拡大している。冷凍食品や水産加工品を含む日本の食品産業にとって、今後10年で最も成長が期待される市場の1つであることを示した。
 JETROによれば、インドはEUに匹敵する広大な国土と多様な文化を抱えつつ、都市化と中間層の増加が急速に進んでいる。所得階層の構造は大きく変化し、2015年に過半を占めていた低所得層は縮小し、30年にかけて上位中間層と富裕層が大幅に増加する見通し。こうした所得上昇は、加工食品や冷凍食品、高付加価値食品の需要拡大を確実に後押ししている。
 食品小売りはインド特有の構造が存在する。全国に1400万店以上ある「キラナ」と呼ばれる家族経営の零細店舗が依然として小売りの主役であり、売上げの7〜8割を占める。冷凍設備を持たない店舗が大半で、冷凍食品の普及を阻む要因となっている。一方で、都市部ではショッピングモールやハイパーマーケット等のモダントレードが拡大し、輸入食品や冷凍食品の取り扱いが増えている。デリー首都圏のスーパーでは健康志向やナチュラル志向を訴求する商品が棚を占め、冷凍野菜や冷凍スナック、冷凍肉類の販売が一般化しつつある。
 さらに、コロナ禍を契機にECが急成長した。Big BasketやAmazonなどのオンラインスーパーが食品デリバリーを一般化させ、冷凍食品の取り扱いも増加している。都市部の若年層や共働き世帯を中心に、冷凍食品が「衛生的で便利な選択肢」として受け入れられ、需要が伸びている。
 外食市場も急速に拡大している。インドの外食産業は年平均10%以上の成長を続け、2028年には800億ドル規模に達する見通しだ。零細店が多数を占める一方で、チェーン店やカジュアルダイニングが増加し、中間層向けの外食が多様化している。
 日本食レストランは17年の約50店から22年には約160店に増え、ホテル内の高級店だけでなく、アジアフュージョン系やカジュアル店でも寿司や天ぷらを提供するようになった。寿司や刺身、海鮮丼などの提供が広がるにつれ、日本産水産物や冷凍水産加工品の需要は確実に増加している。
 ZomatoやSwiggyといったフードデリバリーサービスの普及により、クラウドキッチン型の日本食店も増え、冷凍水産物や冷凍惣菜の活用が進んでいる。
 一方で、インドの食品流通における最大の課題はコールドチェーンの未整備である。冷蔵・冷凍倉庫の不足、温度管理の不安定さ、停電の多さ、道路事情の悪さ、長距離輸送の遅延などが重なり、冷凍食品や水産加工品の品質維持が難しい。全国規模で温度管理が可能な物流会社は限られ、冷凍食品の取り扱いは都市部に偏在している。小ロット輸入が中心で物流コストが高く、冷凍コンテナの確保も容易ではない。しかし、この未整備こそが日本企業の技術が最も活かせる領域であり、冷凍機器、温度管理システム、倉庫運営、品質管理など、日本の強みがそのまま商機につながる。
 規制面でも課題は多い。インドの食文化は保守的で、宗教的背景からベジタリアンの存在感が大きく、食品にはベジ・ノンベジ表示が義務付けられている。輸入体制では大規模インポーターが少なく、通関現場で規制に明記されていない書類を求められるケースもある。
 ラベル表示の英語化、FSSAI(インド食品安全基準局)の規格・認証、外資規制など、輸出企業にとってのハードルは依然として高い。特に冷凍食品や水産加工品は温度管理が必須であるため、物流と規制の両面でリスクが大きい。
 それでも、インド市場の成長性は圧倒的である。若年人口の多さ、所得階層の上昇、外食の多様化、ECの普及、健康志向の高まりなど、冷凍食品や水産加工品の需要を押し上げる要因が揃っている。都市部では魚介類の消費が増加傾向にあり、宗教的制約が少ない水産物は「安全・健康・高品質」として受け入れられやすい。日本産水産加工品の潜在需要は大きく、今後の市場開拓が期待される。
 今回のJETROブリーフィングを通じ、インド市場は冷凍食品・水産加工品にとって極めて有望である一方、輸出・流通・規制対応には独自のハードルが存在することが明確になった。コールドチェーン整備の遅れは最大の課題であると同時に、日本企業の技術が最も求められる領域でもある。食品加工産業の成長政策や日本食の普及と相まって、冷凍食品ビジネスの商機は今後さらに広がると見られる。

協力余地が拡大

 農水省事業インド現地官民ミッション団は、インド政府の投資促進機関Invest Indiaから水産・食品加工分野を中心とした包括的なブリーフィングを受けた。インド側は、急成長する国内市場と加工インフラ整備の進展を背景に日印間の協力余地が拡大していることを強調した。
 インドの水産生産量は24〜25年で1975万tに達し、世界的に存在感を高めている。内訳は内水面1391万t、海面449万tで、特に内水面の伸びが顕著。農業GVA(粗付加価値)に占める水産の割合は7・55%、18〜19年からの年平均成長率は6・3%と安定し拡大を続けている。
 一方で、加工度は依然として低く、冷凍・付加価値品の拡大余地は大きい。インド政府は、統合型シーフード加工施設、コールドチェーンなどの開発を重点分野として位置づけており、特にえび、まぐろ、トラウト、海藻などでの投資機会を示した。
 食品加工全体では27年に市場規模が7700億ドルに達する見通しで、果実・野菜・乳製品・水産物など主要品目の加工率は依然として低い。こうしたギャップが日本企業の技術・設備導入の余地を生んでいる。
 インフラ面では、全国にメガフードパーク、コールドチェーン、アグロプロセッシングクラスターを整備。州政府レベルでも、設備補助、金利補助、電力優遇、土地コスト減免など、多様なインセンティブがあることを提示した。
 日印経済関係では、日本はインドへの第5位の投資国で、累計FDI(外国直接投資)は456億ドル。Japan Plus Desk(経産省・JETRO連携)が日本企業の投資前からアフターケアまでを一貫支援している。日本企業が集積するJapan Industrial Townshipsの紹介もあり、食品加工・包装機械・物流など幅広い分野での協力余地を示した。
 またベルギーの冷凍ポテトメーカーAgristoのウッタル・プラデシュ州での工場案件を成功事例として共有し、土地取得、許認可、電力インフラ整備など、InvestIndiaが提供した実務支援を紹介した。
 今回のブリーフィングを通じ、インド側は水産・食品加工分野における日本企業の参入余地を明確に示した形。日本の水産加工・冷凍食品・機械メーカーにとって、インド市場は今後も注視すべき成長領域となりそう。

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