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今週の一本

●食品冷凍技術推進機構 食品凍結性能を客観評価  木村健 (週刊冷食タイムス:25/08/26号)

認証制度来年開始へ/特殊冷凍装置」「瞬間凍結」など曖昧な概念が先行/「多くの企業の参画を希望」、将来的には国際標準に

鈴木代表理事を中心に、参画企業のフクシマガリレイ本間睦取締役技術本部長、前川製作所稲葉稔和執行役員、サラヤ木原綾大課長、太陽日酸多畑英治山形ソリューションセンター所長が会見に臨んだ
 食品用凍結装置の性能を科学的・客観的に比較する認証制度が来年スタートする。実施主体は(一社)食品冷凍技術推進機構(FFTech)。飲食店や地方の食品製造業が商品を凍結して販売するケースが近年増え、冷凍技術への注目も高まっており、「特殊冷凍」や「瞬間凍結」といったアピールも見られる。しかし、「何をもって凍結装置の性能の良し悪しを判断するか」を示す業界共通の基準はなかった。

 19日開いた会見で、FFTechの鈴木徹代表理事(東京海洋大学名誉教授、日本冷凍食品協会理事、日本冷凍空調学会参与)は「例えば(一般的な食品で)瞬間凍結などはありえない」と例を挙げ、「評価基準に基づいた認証制度を創設し、信頼できる装置選びを可能にする」とプロジェクトの目的を説明するとともに、現状の問題点として次の4つを挙げた。
 @凍結装置メーカー各社が独自基準で性能を評価・提示している。
 Aユーザーが科学的根拠に基づいて選択をすることが困難。
 B装置導入後に「当初想定していたものとは違った」という問題が発生。
 C市場では「特殊冷凍装置、瞬間凍結」などあいまいな概念が先行している。
 こうした問題から「業界全体での透明性の高い評価基準の確立が求められている」と指摘した。
 認証制度の創設は来年4月以降をめざしている。総合的な評価システムとしては、装置の機械性能面の評価と、凍結した食品の品質評価の両方が必要と考えているが、当初は装置の性能評価でスタートし、その後食品の品質評価の評価手法を確立して統合する予定としている。
 装置性能の具体的評価手法はほぼ整っており、試料は500gのタイロースゲルを採用、その中心温度を測る。タイロースゲルは組成や凍結物性が牛肉の赤身に近く、日本冷凍空調工業会も冷凍倉庫のテストや評価に使用しているという。
 能力の指標は品質への影響が大きい0〜マイナス5℃(MIGタイム)と10〜マイナス115℃(FRタイム)を通過する時間とした。
 複数のタイロースゲルを配置して総重量や位置の違いによるムラを補正して評価する。中心点の温度測定も「(センサーを)表面近くに挿せば当然早く温度が下がるし、縦から挿すか横からかでも違う結果が出る」ことから厳密に規定する。
 食品の品質評価については今後詰めるが、氷結晶サイズの観察(小さいほど高品質)や解凍時のドリップ量測定、解凍後の食感評価(テクスチャーを機器で測定)を用いる方向で進める。公正性をチェックする第三者委員会も設置した。冷凍食品協会などとも連携する方針。
 鈴木代表理事は「より多くの冷凍装置メーカーの参画を希望している」と訴えるとともに、「凍結装置メーカーとユーザーのミスマッチを解消し、科学的な根拠を基に最適な装置を選択できるようになる。将来的にはJISやISO等公的な規格化も視野に入れて日本の食品技術の国際化プレゼンス向上に貢献する」と、今後のプランを説明した。
 来年の認証本格運用開始とともに装置メーカーには認証取得を促し、ユーザーへの普及活動を行い、サポート体制も構築する。さらに評価基準を深化させるとともにDX化もめざす。
 同分野の評価基準は世界的にも見当たらないことから、将来的には世界標準となることをめざす。国際会議やシンポジウムで発表して世界へも普及を促す。既に国際冷凍学会(IIR)の食品科学・工学部会(C2)委員長のアラン・ル・バイル教授からも賛同のメッセージを受けているという。
 今回のプロジェクトはその性格上、大型の連続凍結装置というより中小型のバッチ式凍結装置が対象のメインになると考えられるが、ガリレイ、前川製作所、大陽日酸、コガサン、サラヤなどの主要凍結装置メーカーもコンソーシアム企業として参画しており、会見では公正な評価基準を共同で確立することへの賛同を異口同音に語った。

タイロースゲル(関東化学のテストパッケージ3型)
2つの温度帯通過速度について、位置の違いなどで凍結速度が異なるため、上位と下位それぞれ2カ所の平均を算出して装置の能力を表した。

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