この人に聞きたい:第1006回
(週刊冷食タイムス:25/11/11号)
老健・外食やECも強化
(株)ショクカイ 代表取締役社長 高須 清貴氏
(たかす・きよたか)エスビー食品で家庭用商品の営業を長年担当。2018年ショクカイ入社営業部長。22年執行役員営業推進室長兼デリカ営業部長、25年取締役、10月1日付で現職。1964年9月生まれ、61歳。駒澤大経済学部卒。
産業給食でシェア拡大
ヤマタネグループの業務用食品卸。10月1日付で代表取締役社長に就任した高須氏は「産業給食市場でシェアを拡大とともに、2030年には広域(老健や外食)やECなどの領域でも存在感を示したい」と語る。
――ヤマタネグループに入って変化は?
高須 昨年創業100周年を迎えたヤマタネは近年、新規事業への挑戦が活発化しています。ショクカイもその流れの中でグループ入りしました。より中長期的な視点で事業を見直す機会を得ており、持続可能性を重視する文化が根付き始めています。
――現在の事業構成は。
高須 配達弁当給食・事業所給食等(産業給食)の売上構成比が約7割です。そのほかスーパー惣菜・惣菜ベンダー向けの「デリカ」、医療福祉施設・外食チェーン・ホテル向けの「広域」、ECや無人店舗ソリューション「スマリテ」等の「その他」に分かれています。広域とデリカは急成長中で、広域は2ケタ成長を記録しています。得意先数も増加。従来の給食一本足から多角化が進んでいます。
――販路の今後の展望は?
高須 引き続き給食を基盤としながら、広域やデリカの比率を高めていきます。産業給食は市場の中でのシェア拡大も重要です。広域は高齢者施設や外食チェーン向けの提案を強化し、デリカでは量販店本部との商談を通じてブランド価値を訴求していきます。
――EC事業の進捗と今後の計画は。
高須 EC事業は当初月商5千円でしたが、現在150万円規模に成長しています。サイトを刷新し、FAX受注からの電子化移行も進めています。毎月千数百社に郵送している紙カタログのデジタル化も検討中です。受注効率改善と顧客利便性の向上を両立させ、業務の生産性を高めていきます。
――ブランド戦略について。
高須 現在5つのブランドを展開しています。
「ごちそうセレクト」は上質志向で、デリカ向けに展開。「らくらくセレクト」は給食向けで、調理負担軽減を意識。「旨っ!セレクト」はコストと品質の両立を重視する給食・外食業者や中食向けとして展開中。「なくそう食品ロス0」は標語的な位置づけで、フードロス削減に貢献。「ショクカイ」はベーシックPBで、取扱い商品の約6割を占めます。ブランドの乱立を避け、明確なポジショニングを図ります。「ごちそうセレクト」は商談で評価が高く、今後の成長ドライバーと位置づけています。
――物流体制は?
高須 物流は完全アウトソーシングで運営しており、主にランテックと連携しています。自社物流を持たない分、商社的な機能に特化し、柔軟な納品体制を構築しています。地場問屋(二次店)経由の納品も行っており、今後は二次店への展開も強化していきます。細かい納品先への対応力を高めていきたいと考えています。自社物流を持たない分、商社的な機能に特化することで、効率と柔軟性を両立させていきます。
――社内文化や人材育成の取り組みは?
高須 従業員が失敗を恐れずに挑戦できる組織文化の醸成を重視しています。思考力や感性を育む環境づくりにも力を入れています。社内には貸出可能な書籍コーナーもあります。かつてのオーナー経営時代とは異なり、より開かれた企業文化を目指しています。人材の多様性を尊重し、ヤマタネのパーパス「多様な人財が集い、社会に貢献する力を生み出す」を体現する組織を目指します。
――業界構造の変化にどう対応する?
高須 食を取り巻く環境は目まぐるしく変化しています。高齢化、原材料高騰、フードロス問題など、社会課題への対応が求められています。そこで当社は品質管理体制の強化とコンプライアンスの徹底を進めると同時に、環境対応型商品の開発や、食品ロス削減に向けた取り組みを強化しています。メーカーとの連携を通じて、賞味期限が近い商品や規格外品の流通も行っています。
――近い将来に向けたビジョンを。
高須 2030年には産業給食のシェア拡大とともに、広域やECなどの領域でも確かな存在感を示せる企業でありたいと考えています。「四方よし」の企業として、社会、顧客、取引先、社員のすべてにとって価値ある存在になることが目標です。販路の多角化、ブランド磨き上げ、デジタル化などあらゆる面で挑戦を続けます。