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この人に聞きたい:第123回
(週刊冷食タイムス:08/01/01号)

食料資源の効率的使用図れ

社団法人日本冷凍食品協会 会長 垣添 直也 氏

 

 平成20年を迎えるに当たり、謹んで新年のお慶びを申し上げます。平素は当協会の円滑な運営に一方ならぬ御協力、御指導を賜り厚くお礼申し上げます。

「時代の分水嶺」認識し価格転嫁実現を
安価、安定的に調達できる時代終わった

 さて、わが国の経済は全体として景気回復が続いていますが、このところ不安材料が顕在化し一部に弱さがみられます。企業収益は改善が進んでいるものの、設備投資は弱い動きになっており、加えてサブプライム住宅ローン問題を背景とする金融市場の不安定さが世界経済に影響を及ぼし、外国為替相場の変動と相まって好調な輸出への影響が懸念されるところです。
 また、巨大投資ファンドの資金流入などによって原油価格は騰勢が続いており、多くの企業にとって収益を大きく圧迫する要因となっています。さらに、新興国の経済発展や技術革新などを背景に、世界的に燃料、農畜水産物、希少金属などの需要が急激に増加し、国際的な需給関係に大きな影響を及ぼしています。加えて、原油価格の高騰に伴い米国やブラジルなどでは政策的にバイオ燃料への転換を進めているため、穀物、大豆などの国際価格が史上空前の高値を呼んでいます。
 これまでのように必要な原材料を安価で安定的に世界中から調達できる時代は過ぎ去り、これからは有限な資源をいかに効率的に利用するかが課題となり、「時代の分水嶺」に差し掛かっています。

 一方、個人消費はおおむね横ばい程度で推移していますが、依然として消費の弱さが目立ちます。その背景には、特定の産業部門の好調さが家計全般にまで波及していないこと、雇用情勢が改善傾向にあるものの所得の伸びに結びついていないこと、大都市と地方との経済格差の拡大が顕著なことなどが挙げられます。また、日本の総人口が減少に転じた中で、少子高齢化の加速、団塊世代のリタイアなど消費構造の変化に直面しています。
 冷凍食品を取り巻く状況をみますと、前述のように原油価格の大幅上昇に伴う燃料や容器包装等のコスト上昇に加え、穀物、油脂原料、水産物、畜産物などの食品原材料の国際価格やフレートは記録的な高水準に達しています。今後とも、こうした原料高の傾向は長期間継続するとの見方が有力です。
 一方、急激に需要拡大が進み経済成長著しい中国などの東アジア諸国や水産物需要が旺盛な欧米諸国などとの資源確保の競合が強まっており、いわゆる日本の「買い負け」現象が生じています。今後も長期間に亘って原材料の急激な価格上昇が続くことは考えられませんが、価格水準がこれまでとは次元の異なるところに移行することは間違いないと思います。国民に安全な食料を安定的に供給する役割を果たすため、原材料について従来のような価格や調達手法が通じなくなったことを認識することが必要です。

 このような背景から、燃料、食料、日用雑貨など広く国民生活に直結する商品の小売価格改定が打ち出されています。しかし、燃料分野を除いて、コストアップ分の価格転嫁は必ずしも進んでおらず、特に食料品価格は依然としてデフレから脱却していない状況です。特に冷凍食品では未だに大幅値引き販売が主流になっています。オーバーストア状況下で大手量販店を中心に価格改定に強い抵抗がありますが、適正な価格転嫁を適正な時期に行わなければ資源配分を誤らせることになり、長期的な安定供給を損なうことにもなりかねません。
 こうした事態は、消費者にとっても小売業にとっても決して利益にはなりません。そのため過度な価格依存から脱却し、真に消費者の求めるものを追求した製品開発などへの投資を行いうる環境整備が不可欠です。今こそ、関係者が一体となって冷凍食品の価値を高めていくことが必要な時です。

 次に食の安全・安心の問題ですが、一昨年に食品中に残留する農薬等の規制がポジティブリスト制に移行しました。輸入冷凍野菜については、会員各社や関係者の懸命な対応によって、いくつかの違反事例があったものの、今のところ大きな社会問題に発展していません。しかし、食品業界の度重なる表示違反事件や中国製品の安全性に対する世界的な信頼性低下によって、冷凍食品分野でも大きな影響を受けました。食品表示違反といっても、人の健康に関わるものから軽微なミスによるものまで区々ですが、事の軽重とは無関係に社会的糾弾を受ける事例も見られます。会員各社におかれてはコンプライアンス体制の確立強化を図り、引き続き食の安全の確保に全力を尽くしていただきたいと思います。

 環境問題については、一昨年来、容器包装リサイクル法、食品リサイクル法が相次いで改正され、廃棄物に対する事業者の責任や負担が重くなる傾向にあります。また、ポスト京都議定書に向けて各国が地球温暖化防止対策を競っている状況にあり、今後の地球規模での対策実行に向けて今年がその転換年になると思われます。いずれにしても、冷凍食品業界としてCO2排出の大幅削減のため強力な対策・実行が求められるのは不可避です。そのためには、コスト負担や実行体制のあり方など課題は多いものの、環境問題の社会的重要性に対し、受身ではなく先手を打って出ることが重要です。

 当協会としても、これらの課題に対して適時適切に対応するため、昨年、各種の部会や研究会を設立・再編し、活動的な協会を目指してきました。まだ十分とは言えませんが、それなりの成果があったと感じています。例えば、普及特別事業は従来3カ年計画でしたが、世の中の動きに柔軟に対応するため19年度から2カ年に改めるとともに、消費者の目線に合わせた事業展開に心掛けました。また、品質管理の維持向上を図るため、時代の変化に柔軟に適応するような自主的指導基準の見直しを検討しているところです。
 本年も会員の皆様のニーズに合った事業展開を図っていきますが、近年会員数の大幅減少によって会費収入も減少しており、業界のさらなる発展に必要な事業展開に支障が生じる状況になってきています。今後、十分精査しますが、会員の皆様に新たな負担をお願いする場合には、御理解いただきたいと思います
 本年も、協会会員各位をはじめ流通関係、機器メーカーなど冷凍食品業界に関係する方々の深い御理解と御協力をお願い申し上げ、新年の御挨拶といたします。

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