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この人に聞きたい:第183回
(週刊水産タイムス:09/03/16号)

景気低迷、乗り切りに自信

マルハニチロHD社長  五十嵐勇二氏

 

五十嵐勇二マルハニチロHD社長に聞く

統合効果あり、十分戦える
 昨年4月に水産・食品・畜産・物流の4事業会社がスタートして間もなく1年。マルハニチロホールディングスはこの4月、中期経営計画「ダブルウェーブ21」の2年目に入る。統合効果はどう発揮されたか、また、100年に一度という経済危機にどう立ち向かうか。今期の状況と新年度の展望について五十嵐勇二社長に聞いた。

 ◆大幅な人事を行ったが、旧マルハが主流を占めているようにも見える。
 「それは全くない。部長クラスの世代である50〜60代に旧ニチロの層が薄かっただけ。昭和48〜49年あたりの入社が少なかった。今回の人事はあくまで世代交代と若返りが主眼」
 
 ◆田中龍彦会長が相談役に退いたが。
 「2006年暮れに経営統合を発表して以来、07年10月の経営統合、08年4月の事業会社スタートと、第一段階は終えた。田中会長も68歳。同時に2人とも辞めるわけにはいかないので私が残った。中部謙副社長は単純な役員定年。ホールディングスの河添誠吾常務がマルハニチロ物流、水産の重田親司専務が大東魚類へ行く」

 ◆アクリフーズの羽田誠一社長と食品の田辺裕専務が入れ替わった。
 「かつての雪印部隊(現アクリフーズ)とマルハニチロ食品を交流させたかった。相乗効果があるはず。食品の神田和明専務はホールディングス専務として大所高所から生産統合をみてもらう」

 ◆統合の実を求める段階に入っている。
 「昨年秋からの世界的な経済危機で状況が一変した。この危機を乗り越えるのに、結果として統合が大きな力となるだろう。

 ◆コストダウンの成果は出ているようだが。
 「特に食品部門で重複や無駄がみえてきた。統合1年目のコストダウンは26億円。昨年は約200人の人員削減となったが、この3月にも150人程度減る」

 ◆今期の見通しは。
 「売上高は9000億円くらい。営業利益は160億円で、当初予想の190億円には足りないが、旧ニチロを加えて算出した前年が145億円だから実質で15億円の増益。厳しい環境下で健闘したともいえなくはない。ただ、前半の稼ぎ頭となった水産セグメントも第3クォーターになると全くダメで、第4はもっとひどい。利益の厚い高級商材が売れず、荷受も在庫を持ちたがらない」

 ◆この不況はいつまで続くとみる。
 「2年は続くとの声もあり、もっと長いとする向きもある。今年いっぱいはダメだと考えるのが一般的だろう。カギは米国。オバマ政権で米国が回復に向かえば、思ったより(日本の不況回復も)早まるかもしれない」

 ◆しばらくは低価格品が主体になる。
 「価格競争がドロ沼化するのはどうかと思うが、消費の冷え込みを想定しての事業展開となる。景気は悪くなったが、原料、資材や物流費も相当安くなった。これに統合による合理化を加えれば十分戦えるとみている」

 ◆事業面での統合メリットは。
 「水産は扱い量が旧マルハと比較して1.5倍になった。大半の魚種がトップシェアとなり、商売しやすくなった。主要荷受がほとんど取引先。今期は25〜26万tの扱いだが、もともとマルハは20万t、ニチロが10万tだったから、30万tがベースとなる。前半が買い負け、後半は買い勝ちとなったが、中期的に世界をみれば水産物は明らかに需要過多。世界の水産物需要はジリジリと拡大していき、調達力がカギになる。逆に日本の消費はそれほど増えないだろう」

 ◆食品事業も厚みが増した。
 「全体で3000億円。マルハは冷凍事業が200億円から1200億円と拡大したし、ねり製品やレトルト食品が薄かったニチロも事業の幅が広がった。水産缶詰はツナ缶を除けばほとんどがトップシェア。冷食ではマルハの原料調達力とニチロの冷食技術で内製化した商品も評判がいい」

 ◆新年度の計画は。
 「各グループ会社の予算は、どこも強気。景気は厳しいものの、食品産業は別。自動車、電器は我慢できるが、人間は食べずに生きていけない。客観的にも勝算の目があり、ホールディングスが押し付けた数字ではないので、尊重したい」

 ◆物流や畜産事業は。
 「物流は5〜6年前の状況から進展していない。保管機能にとどまっていては、厳しい競争に勝てないだろう。畜産も500億円程度で、まだ中途半端。チルド帯のビジネスがポイントになる。1000億円くらいには持っていきたい」

 ◆荷受の再編は。
 「ビジネスモデルの構築が迫られている。70歳や80歳の社長が当たり前というのもどうか。構造的な問題から考えないとダメで、再編もその一つ。グループでは九州で再編が進んでいるが、東京や関西に比べると業績はいい。4月には熊本と鹿児島が合併する運び。九州からビジネスモデルを構築したい」

 ◆海外事業をどう強化する。
 「中期的には積極的に取り組みたい分野だが、M&Aにしても円高という今の経済情勢はリスクが高く、慎重にならざるを得ない。場合によっては全損もあり得る。ただ、いい条件の話があれば別だ」

 ◆国内では北海道から食品工場の統廃合が進んでいるが、今後の設備投資の予定は。
 「09年度の設備投資は170億円。それに10億円程度の投資を含め、合わせて180億円を見込んでいる。そのうち約90億円が増強や開発などの前向きな投資。あとの80億円は維持・補修などに充てる。08年度の実績が130億円だから、予算としては50億円増える。金額的に最も大きいのは大洋エーアンドエフの新造船。09〜10年度で2隻、50億円を予定している。

 ◆食品工場では北海道で拠点を集約しているが。
 「北海道は24工場ある。08年度中に青森を入れて4工場を閉鎖(1工場は売却)。あと20工場だが、畜産工場は4カ所を2カ所にするとか、食品工場もさらに集約するなど、最終的には半分程度になるのではないか。ただ逆に中国問題以降、国産回帰も出てきた。国内工場をある程度有していることは強みでもある」

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