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この人に聞きたい:第186回
(週刊水産タイムス:09/04/06号)

ニチレイ 人材育成・設備投資に注力

ニチレイ社長  村井利彰氏

 

水産の黒字定着と冷食の再生を 

 分社化がすっかり定着したニチレイは、前3月期で水産事業が悲願の再生を果たしたが、コア事業の加工食品は市販用冷食が中国問題で打撃を受け、それまで堅調だった業務用食品も下期は100年に一度の経済不況が情け容赦なく襲った。業界トップの低温物流事業は国内・海外とも成長路線を歩み続けているが、当面は水産事業の安定した黒字化と、逆風にさらされる加工食品の復活が課題。村井利彰社長に新年度の戦略を聞いた。

 ――前3月期は各社とも前半戦は水産商事を中心に概ね好調だったが、リーマンショック以後は不況の波が襲った。
 「まるで個々の企業の努力を吹き飛ばすかのような不況だ。水産事業も上期は非常に良かったものの、年明けの1〜3月は赤字だ。新年度になっても不況の流れは続いており、この苦境からいかに早く脱却するかが各社共通の課題といえる」  

 ――とはいえ水産事業は念願の黒字化を果たした。
 「まずは胸をなでおろしているが、新年度で再びの赤字転落は絶対に許されない。日本の水産業界はまともな商売ができないような状態で、ここへきて大型倒産も相次いでいる。事業環境の上では、むしろ今期のほうが厳しくなると見たほうがいい。自動車、精密機械、電化製品と食品では程度の差こそあれ、リーマンショックの影響を日本が最も受けているような気がする」

 ――加工食品は第3四半期に比べて、業績が好転しているようだが。
 「昨年は中国問題が直撃し、大きなダメージを受けた。外食産業が今後も低迷すれば業務用冷食に当然影響が出るし、昨年は安心安全問題のあおりをまともに受けた市販用冷食も今は、この不景気が最大の逆風。割引セールも行われているが、この不況下で消費者の中に冷食に対する割高感が強まっている」

 ――グループのコア事業。対策は。
 「新年度は冷食事業の再生の年にしなければならない。一連の事件で国産には追い風が吹いているが、中国産の冷凍食品や冷凍野菜がどれだけ真面目に作られているかを消費者に認識してもらうことが重要だ」

 ――利益面では低温物流事業の比重が大きい。
 「昨年稼働したキョクレイ(横浜市)の山下物流センター(1期工事分)などの減価償却があるので減益となるが、事業そのものは国内・海外で着実に拡大を続けている。地域保管事業では大阪北港、川崎の東扇島、福岡、キョクレイ山下(2期工事分)の4カ所で新・増設がある。物流ネットワーク事業も栃木、福島、大阪、兵庫などで新たな受託が増えており、一定の増収が見込める状態になっている」

 ――低温物流事業は海外もたくましく成長を続けてきたが。
 「欧州は景気の悪化が著しいが、設備投資は続けている。次なる成長に向けて、ポーランドに冷蔵倉庫の新拠点が8月に完成する。貨物はアイスクリームや農産品が主体」

 ――中国の低温物流事業はどうか。
 「上海ではコンビニエンスストア(ローソン)店舗配送業務を核とした物流を行っているが、日系企業からの引き合いが増えている。低温物流ニーズが高まっている中国国内で、日本国内と同レベルの高い物流品質を維持していることが優位性を発揮している。この流れの中で上海に2つ目の物流センターを建設する」

 ――新年度の予算は。
 「昨年11月に予算編成を済ませたが、この間に市場環境が大きく変わっており、実勢との整合性をとる必要が出てきた。例えば営業利益の半分近くを稼ぐ低温物流事業にしても、欧州で約1億5000万ユーロの売上高を上げているが、計画立案時の想定の1ユーロ=150円が現在は130円程度。予算や計画を立てても、為替で吹っ飛ぶのが海外事業の宿命と言ってしまえばそれまでだが」

 ――国内もなかなか先が読みづらい時代だが。
 「内部的な目標・計画は変えないものの、対外的に示す数字は現状を踏まえた上で再検討し、5月をメドに明らかにしたい」

 ――低温物流事業会社(ニチレイロジグループ本社)の社長になって4年、持株会社ニチレイの社長としてもそろそろ3年目に入る。
 「大変な時代に社長になったと思う。実感したことは人材育成と設備投資は、業績の良し悪しに関係なく続けなければならないということ。特に設備投資は金を出せばできるが、人材は金を払えばできるというわけではない」

 ――家庭や学校で教育し、社会人として送り出すというのが本来の姿なのだろうが、「人財」に成長して、会社に貢献するようになるには会社に入ってからの研修・教育が不可欠になってくる。
 「人事部といった部門に任せるようなやり方ではダメだと思い、各事業会社の社長を教育責任者に据えた。今年は87人が入社したが、人材育成は未来への投資。業績に多少の波があったとしても、採用をゼロにしたのでは後世に負の遺産を与えることになる。設備投資でも同じことが言える」

 ――ニチレイグループが分社化したのは業界再編含みだったはずだが。
 「マルハとニチロの経営統合もあって、再編に関する取材や問い合わせが後を絶たない。どこからそんな話が、と思うような噂も出る。確かに今の日本のマーケット規模からいっても業態で3社くらいが適当だろう。再編を話し合うのはやぶさかではないが、やるならリストラも辞さないといった相当な決意と覚悟が必要。お互いの良い部分を残し、あとはバサッとやる勇気が大事で、こうしたことは時間をかけたり、中途半端に取り組んだのではうまくいかないものだ」

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