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この人に聞きたい:第190回
(週刊水産タイムス:09/05/11号)

ムダは“宝の山”と同意

(株)マルハニチロホールディングス 代表取締役副社長  久代敏男氏

 

生産合理化を全国に拡大

 事業会社のスタートから1年。マルハニチログループにとって今年度は中期経営計画「ダブルウエーブ21」の2年目にあたる勝負の年となる。統合の成否を決する年ともいえ、事業シナジーの加速化も求められよう。4月1日付で就任した久代敏男マルハニチロホールディングス代表取締役副社長に新年度にかける思いを尋ねた。

 ――今回の人事で表舞台に出たという印象を受ける。どのような役割を果たすつもりか。
 「事業会社がスタートして1年。グループとしても、事業レベルでも統合効果は出てきたが、まだ十分ではない。五十嵐勇二社長の下、グループ200社が目指すべき方向へ一致団結できるよう、私なりに努力する」

 ――企業にとって大切だと思うことは。
 「社員のモチベーションをいかに高められるか。それが最終的に企業の将来を決する部分だろう。長年にわたって人事・労務管理に携わってきたが、社員の心がよどみ、仲間意識が欠落しているようでは良い仕事はできないし、グループの力も発揮できない」

 ――事業面である程度の統合効果があった。
 「水産も食品もマルハの単体、ニチロの単体に比べて、戦いの舞台は拡大した。水産は大半の魚種が圧倒的な取り扱いとなり、食品でも旧ニチロの食品群にマルハの魚肉ハムソーや缶詰、ゼリー、ちくわなどが加わった。缶詰ではツナ缶を除く水産缶でほとんどがトップシェア。価格形成力を潜在的に有する企業に近づきつつあるのではないか」

 ――生産の合理化は。
 「要員の適正化は一応終わったが、工場の再編はこれから。ムダは、言い換えれば宝の山。利益へと転換できる宝が眠っていると捉えればいい。今度は宝の山として顕在化させていく段階。『攻め』か『守り』と問われれば、今は攻めの時だ」

 ――それぞれの事業会社が元気になるのは何よりだが、同時にグループのシナジー効果も問われる。
 「例えば保管物流セグメントでもバラバラだった冷蔵倉庫会社が統合したマルハ物流ネット(現マルハニチロ物流)は事業の懐が深くなり、大型投資も可能になった。水産や食品でも次への事業提携や資本参加、工場買収を模索できる段階になった」

 ――計画を下回ったとはいえ、前3月期の営業利益160億円は健闘といえなくもない。当期純損失60億円が痛いが。
 「為替差損や投資有価証券の減損処理の結果だが、今期は何とか最終損益をプラスに転じたい。社員の労働要件向上も実現したいし、私自身も勝利の美酒を味わいたい」

 ――営業利益を200億円の大台に持っていくためには。
 「決して手の届かない数字ではない。まずは赤字会社を水面上に引き上げるのが先決。これだけで20億円になる。前期はマグロを主体に荷受ユニットが良くなかった。今期は各事業会社の計画を合計するとかなり良い数字になる。失点をしないようにすることも大事。日々流した汗が利益に結びつかないとモチベーションも上がってこないものだ」
 
 ――経済状況が好転すればいいが。
 「すぐには期待できないだろう。こういうことに関しては意外と悲観論者。加工食品も高いものはあまり売れず、低価格商品に集中している。例えば手掛けているペットフードでも100円の缶詰が売れない代わりに、63円の新商品が飛ぶように売れている。それでも利益を出していくには足腰を強くしていく以外にないだろう」

「働く喜び」を現場で創出
 ――そのためにも生産体制の改編が急がれるところだ。
 「HDの神田和明専務が陣頭指揮で取り組んでいる。北海道・東北を第一弾とし、順次全国に拡大していく。商品開発や品質管理の強化も考慮しつつ、生産・物流の効率化によるコスト低減を念頭に進めていく。かつてお客様相談室を担当したことがあったが、お客様は安かろう、まずかろうでは絶対受け入れない。安くても美味しく、品質の高い商品を求めるムードがさらに高まっている」

 ――そうなると中国産を抜きに戦えないのでは。昨年は天洋食品の問題があったが、業務用では既に中国産が復活している。
 「中国にある合弁会社の品質管理は徹底している。現実問題として輸入がストップしたら、日本人の食生活の水準を維持することは困難である。人は干上がってしまう。海外だから、国産だからというだけで価値が決まってしまうような現状に疑問を感じる」

 ――生産現場では品質管理の上で“フードディフェンス”の概念が注目されている。やたらと監視カメラが多いのはどうかと思うが。
 「監視カメラも必要だと思うが、最終的にはそこで働く一人ひとりの問題。働くことの喜び、充実感が伴っていれば、監視カメラがあろうとなかろうと、良い商品を提供したいという思いになるし、逆に不満を抱えながらの仕事では危なくて仕方がない。働く喜びを創出できるような環境づくりが大切だ」

 ――東京・築地にある水産加工会社のオカフーズでは、中国の取引先の言い値より2%高く買うようにしている。1%は会社の利益に、もう1%は従業員の福利厚生に充ててほしいというのだ。
 「非常に参考になる話。労務管理の基本だろう。義務感で会社に来るのではなく、今日も会社に行きたいと思えるような会社にすることこそ、我々が目指すエクセレントカンパニーにほかならない」

 ――ところで4月の新体制では旧マルハ出身の部長人事が目立ったが。
 「それは全くの誤解。ニチロは昭和50年代の数年間、採用を抑えたことがあり、部長クラスにベテランが多かった。今回は若返りを主眼にした人事であり、部長として登用すべき世代にニチロ出身者が少なかったため、結果的にマルハ出身者で占めたような形になった。あくまで人事は人物本位だ。マルハもニチロもない。マルハニチロという同じ船に乗った仲間であり、一蓮托生だ」

 ――社名変更はあるか。
 「考えていない。話題にすら上っていない。マルハニチロで行く」

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