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この人に聞きたい:第347回
(週刊冷食タイムス:12/07/03号)

根強い機械至上主義

(有)小杉食品技術事務所 代表   小杉 直輝氏

(こすぎ・なおてる)昭和33年味の素入社。冷凍食品事業を立ち上げた一人。平成3年退社し、同年7月事務所を開設。著書に「食品工場改善入門」(水産タイムズ社刊)など。京都出身。

改善は「物」ではなく「人」にある

 自動車産業などの分野では日本式「カイゼン」が世界的に知られているが、食品産業は意外と改善が進んでいないのが実情。冷食工場を手始めに多くの食品工場の改善を成功させてきた小杉直輝氏に聞いた。

 ――改善を始めたきっかけは冷凍食品だった。
 小杉 昭和55年頃、味の素本社の冷凍食品部で技術の統括を務めていたが、丁度その頃から自社の大量生産ラインが業務用市場のニーズに合わなくなっていました。ところが当時は高速で能力の大きな設備を使うのが当たり前で、営業からは小ロットの注文が入ってくるものの、自社工場では採算が合わず、下請けに回すケースが増えてきました。そのため自社工場の伸び率が低くなった。

 ――最新鋭の工場が下請けの一般の工場に負けた。
 小杉 その時管理部長から紹介されたのが名古屋工大の経営工学の熊谷智徳教授。当時は私も含め、改善とは作業者の作業を機械に置き換えるものと考えており、誰も作業のムダなどは見えなかったし、作業者の作業にムダがあるとは思ってもいなかった。先生の現場指導時に言われる指摘をテープに取っていたが、現場が出してくる改善案には、すぐ出来る改善などは無く、機械投資の案ばかりだった。どうも先生の指摘と違うと思い、そのテープを何度か聴き直していたら、突然目の前に生産現場が現れ、先生の言う、人が行う作業のムダが目の前に現れた。目から鱗が落ちた瞬間だった。それからは自分で現場に入り、「これをこうしたらどうか」と作業を変えていった。それをきっかけに短時間で生産性2倍、生産品目3倍を達成した。

 ――その後独立した。
 小杉 55才で退職し、その年の7月事務所を立ち上げました。なぜ工場改善の仕事を? と良く聞かれるが、当時、メーカーは見かけの安さで海外に生産を委託するところが増えていた。日本が高いのは人件費なのだから、生産性を上げる様に改善すれば、それに対抗できるはず。

 ――日本の空洞化といわれ始めた時代だ。
 小杉 食品工場だけではなく、農産物でも植え付けから収穫、出荷までの作業改善をすれば利益を出すことが出来る。

 ――食品工場も未だ改善の余地がある。
 小杉 私が改善を始めた頃と同じ状態の工場が今でも非常に多い。機械のスピードは速ければ速いほど良いといった機械至上主義も根深い。実際には早すぎると作業員も増やさなければならなくなったり、トラブルがあったりで総合効率は60%ぐらいになってしまうんです。

 ――「当社はムダが無いから改善は必要ない」という人もいる。
 小杉 ムダを取り除くとまたその先にムダが見えてくる。かくあるべきという最高型に近づけることが大切。工場だけではなく、トータルコストとして受注から考えないと本当のコスト削減にはならない。改善には終わりがない。

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