この人に聞きたい:第385回
(週刊水産タイムス:13/04/01号)
中核子会社の合併
(株)マルハニチロホールディングス 代表取締役社長 久代 敏男氏
(くしろ・としお)1947年、島根県生まれ。中大法卒。マルハ人事部副部長、冷蔵事業部長などを経て、マルハグループ本社常務、マルハニチロホールディングス専務などを歴任。10年から現職。
経営統合の総仕上げに
――マルハニチロホールディングスの中核子会社、マルハニチロ水産、マルハニチロ食品、マルハニチロ畜産、マルハニチロマネジメントと、アクリフーズの5社を来年4月1日付で合併すると発表した。歴史的と言われたマルハグループ本社、ニチロの統合から6年。今、なぜ事業会社の合併なのか。
久代 1年以上前から検討していた。マルハ、ニチロの統合から丸5年。これまで我々は結束して「統合効果の追求」「優良な食材の安定供給」「世界市場への挑戦」「CSR経営の徹底」に取り組んできた。
総合力強化とコスト削減
マルハとニチロが統合した当時は「弱者連合」などと揶揄(やゆ)されたこともあったが、それだけに我々も歯を食いしばってきたつもりだ。その結果、事業会社が軌道に乗り、財務体質も改善、経営統合そのものは間違いなく成功だったと自負している。
事業面でのくくりとしての事業会社も十分機能しているといえるが、ただ、その半面、グループとしての総合力の発揮に限界も見えてきた。会社の枠を超えた取り組みや、協業に一定の制約があったことも否めない。
これから先、大型の設備投資や本格的な海外事業の展開、グループ内における活発な人材交流(人事異動)などを考えると、統合の総仕上げとして中核となる連結子会社の5社を統合し、総合力のさらなる強化を目指すのがベストであるとの結論になった。
――社員はかなり驚いたのでは。
久代 3月15日のグループ経営会議で発表した。びっくりしたとは思うが、その後の懇談会では概ね理解され、前向きに受け止められているとの印象を持っている。
事業会社の独立採算制は収益面で一定の効果をもたらし、意思決定の迅速化など、それなりのメリットがあった。この体制を全面否定するつもりはないが、その一方で肥大化した管理コストにもメスを入れなければならない。
今後、合併会社を中核として、グループの経営資源を戦略的に活用できる仕組みを構築し、その仕組みを通じて現状の事業の枠組みを超えた新たな展開を促進していくことが何よりも大切になってくる。
秋に会社概要を発表
併せて合併会社の資本の充実や管理コストの低減などで、一層強靭な体質への転換と、経営効率の改善を図っていきたい。
――合併会社設立に向けてのスケジュールはどうなっているのか。
久代 私を委員長とする統合準備委員会、そのもとに作業分科会を設置し、合併の方法や比率、合併後の概要を詰めていく。来年度は新しい中期経営計画がスタートする年でもあり、今年10月には新会社の概要と新中計の骨子を発表したい。6年前の大掛かりな統合を経験しているので、参考にできる点はかなりあるはず。
――6年前の経営統合の際に、今回の統合の青写真が描かれていたのでは。
久代 それはない。まずグループとして経営統合し、事業会社制を軌道に乗せ、一定の成果を上げたのは事実。この間、財務体質も大きく改善した。
広がる舞台で思う存分
ただ、現状は、組織的に旧マルハの社員が「マルハニチロ水産」、旧ニチロ社員は「マルハニチロ食品」に籍を置いている。例えば旧ニチロの社員でマルハニチロ水産にいる人は、出向という形をとっている。こうした複雑な体系が、新会社設立によってすっきりことも1つの大きな変革点になる。
――スケールメリットも生かせる。
久代 無駄を省くというだけでなく、国内の販売強化、さらに今後の海外展開を踏まえた時、スケールメリットは現実として重要なポイントになる。3000億円の会社より8000億円の会社の方が当然、有利に事業展開できる。
いずれにしても5社の合併によって、踊る舞台は間違いなく広がる。これからは水産セグメントと食品セグメントの人事交流も積極的に行いながら、大きくなった新たな舞台で、マルハニチログループの一人ひとりが思う存分、力を発揮してほしいと願っている。