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この人に聞きたい:第459回
(週刊水産タイムス:14/09/22号)

食品物流のトップへ 取り組みの決め手は?

(株)ニチレイロジグループ本社 代表取締役社長  松田 浩氏

(まつだ・ひろし)1959年(昭和34年)11月14日、広島県生まれ。ニチレイ・ロジスティクス東海社長、ニチレイロジグループ本社執行役員営業推進部長、常務を経て、2012年(平成24年)4月から社長。武蔵工業大卒。

物流品質で「選ばれつづける」

 ――先日、ニチレイロジグループ東扇島物流センター(川崎市)を取材した。2期棟が昨年完成。1期棟と合わせた保管能力8万tのスケールに圧倒された。免震構造にも着目した。
 松田 免震構造は業界に先駆けて採用した。1期棟の完成直後に東日本大震災が発生したが、影響は軽微だった。荷物はもちろんだが、従業員の安全が大切。建築コストの問題ではない。免震構造は他社も相次いで採用。今後、発生が予想される直下型地震に対して、あらゆる備えが必要だ。

 ――最近の低温物流業界の傾向について。
 松田 大きなトレンドとして、今までは原料で輸入されていたものが、製造拠点が海外にシフトし、半製品、製品の状態で入ってくるようになった。原料であれば生産拠点の近くで保管したいというニーズがあるが、製品になると、より消費地に近い所を望まれる。製品は原料と違って回転も早い。加工機能も求められる。どうしても東京、大阪の大都市圏に、輸入貨物に対応した高機能型の冷蔵倉庫が必要になる。

 ――効率化に向けては。
 松田 原産地から消費地までの各機能を一貫して当社にお任せいただくことで、トータルのコストカットが可能になる。例えば大阪や名古屋に届ける荷物で、一度東京に搬入してから運んでいるものを、一旦現地(海外)の当社拠点でまとめて直接大阪や名古屋に運ぶようにすれば、それだけコストを減らせる。お客様にも我々にも双方にメリットをもたらす仕組みを確立していく。

 ――今期4〜6月の業績は。
 松田 既存事業が伸び、新設物流センターの稼働もあり売上げは順調だったが、営業利益は電気料金の値上げや運送コストの増加などで計画を下回っている。電気料金値上げに対しては省エネの徹底、輸配送コスト上昇に対しては効率化を進めるという、我々の自助努力が大前提となるが、さすがにここまで影響が大きくなると到底吸収しきれるものではなく、お客様にも応分のご負担をお願いしなければならない。

 ――7〜9月は。
 松田 稼ぎ時の夏休みシーズンが天候不順となった影響で、お客様の販売状況も総じて厳しかったと伺っている。連動するTC(通過型センター)事業も苦戦。一方、料金改定はご理解が得られつつある。新施設の稼働もあり、通期は計画通りに着地させるつもり。

 ――「食品物流ナンバーワン企業」、売上高2000億円を掲げているが。
 松田 次期中計で具体化したい。但し、単純な金額ありきではない。ニチレイロジグループは「選ばれつづける仕事。」がブランドスローガン。あくまで物流品質の上でお客様から評価ナンバーワンを目指す。その結果として2000億円がある。

 ――顧客の満足度が大切。細かな積み重ねだ。
 松田 どの業界もそうだが、安かろう、悪かろうでは長続きしない。我々の物流品質が評価され、お客様に選ばれ続けることを目指している。

 お客様の要求に100%応えればいいというのではなく、お客様の期待を少しでも上回る努力が必要。そうでなければ、規模がナンバーワンでも競争には勝てないだろう。前社長(村井利彰現ニチレイ会長)時代に「選ばれつづける仕事賞」を創設し、業務内容、部署を問わずお客様から評価をいただいた社員をグループ全体で称えている。事業所の花壇を綺麗に整える、あるいは汗だくのドライバーさんに飲み物をサービスするといった、ちょっとした心遣いも評価対象となる。

 ――最近の顧客ニーズで目立つのは。
 松田 TC事業では3温度帯で一括提案してほしいとの要望が増えている。ある程度は対応しているが、チルド、ドライを含めた十分な機能を持っているとは言えず、強化が必要だ。

 ――都内はスクラップ&ビルドが待ったなしの状態になっている。
 松田 冷蔵倉庫は食のベースインフラという機能を考えると、「ビルド&スクラップ」という順番が理想。需要が見込める東京、大阪にはまだ拠点が必要だし、単純な保管型ではなく、流通機能を持たせた設備が求められている。これは当社に限らず、他社も取り組んでいくだろうから新陳代謝は進むと考えている。

 ――地方の設備投資は。
 松田 地方エリアで独自に成長を続けていくには、これまでとは違った切り口が必要。産地では、地域の6次産業化の動きに呼応していくのも一つの方法ではないか。冷蔵倉庫は全国的にみれば中小企業が多いが、国民の食生活を支える重要な社会インフラであり、是非行政からの支援もお願いしたい。

 ――まもなく関西に4万tの咲洲物流センターが完成する。
 松田 関東に続いて、関西港湾エリアの庫腹能力を増強する。4年前から大阪北港で2万tの物流センターが稼働しており、近年で合計6万tの庫腹を純増させることになるが、さらなる設備投資も検討しなければならない。

 ――産地型では、この秋、北海道に十勝物流センターも完成する。
 松田 有力な産地は海外への輸出拡大を視野に入れている。これまで当社の輸配送機能拠点は札幌周辺に集中していたが、十勝に中継拠点があれば道東から効率的に苫小牧などへ運ぶことができるため、そのお役に立てると考えている。産地には品質の高い商材が多数あるので、ボトルネックになっている物流のお手伝いができればと思う。

 ――事業もまだまだ伸びる余地がある。ただ気になるのは、地域保管事業、物流ネットワーク事業、運送・配送・PC事業と多岐にわたることからグループ会社が多いこと。組織が複雑になっている。
 松田 確かにそうだが、我々は分社化以降、地域密着型のスタイルで成長してきた。グループ間の連携も確立、強化されてきており、以前の姿に戻るつもりはない。これからも地域の独自性を重視していく。

 ――海外は欧州に続き、東南アジア、特にタイに力を入れている。
 松田 合弁会社(SCGニチレイロジスティクス)の新設物流センターがいよいよ10月に稼働する予定。タイは、チキンをはじめとする食の一大供給拠点。タイが東南アジア展開の礎になることは間違いない。当面はタイ国内及びタイから日本への物流に注力するが、いずれは欧州なども含めた国際一貫物流を展開していきたい。

 その仕組みを作ることが大変。仕組みさえできれば、あとは幹を太くしていくだけ。立ち上げたばかりなので、あせらず、じっくりと“いいビジネス”に仕上げていきたい。

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