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この人に聞きたい:第556回
(週刊水産タイムス:16/09/19号)

豊洲新市場の安全対策急げ

築地市場協会 会長  伊藤 裕康氏

 

安心の食品流通を最優先に

「茫然自失」から前向きな議論に

 築地市場から豊洲新市場への移転をめぐる、小池百合子東京都知事の「移転延期」表明後、「盛り土」「地下水」と、新たな問題が表面化している。今後の見通しが全く立たない状況の中、11月7日の新市場開場を目指して準備を進めてきた業界関係者の失望感は深い。情報公開を怠ってきた都政に対する不信感も頂点に達している。築地市場協会の伊藤裕康会長に一連の動きについて聞いた。

 ――8月31日の「移転延期」決定後、新たな問題が次々と発覚している。
 伊藤 小池知事が延期の理由に挙げた3つの疑問、すなわち@安全性への懸念A巨額かつ不透明な費用の増加B情報公開の不足――に異論を唱えるつもりは全くない。ただ、我々は東京都が決定した「11月7日開場」に向けて、あらゆる準備を重ねてきた。そこへ突然の「移転延期」。まさに茫然自失といった状態だ。

 ――その後、9月10日に土壌汚染対策の一環としての「盛り土」が一部、実施されていなかったことが発覚し、より深刻な事態になった。
 伊藤 全く知らされていなかった。これは食品を扱う市場にとって安心安全の根幹を揺るがす問題。むしろ移転延期表明よりも衝撃が大きかった。一刻も早く詳細な調査を行い、その結果を踏まえて対策を講じるよう、東京都に対して強く求めたい。

万全な補償、都に求める

 ――小池知事は「移転延期」表明の中で、1月中旬とされる地下水モニタリング調査の最終結果を踏まえ、新たな移転時期を速やかに判断すると表明したが。
 伊藤 盛り土の欠落、地下空間の存在、さらに地下水問題が出てきて、先の見通しが全く立たない状況になった。既に冷蔵倉庫は冷やし込みを始めており、電源を切るわけにはいかない。もちろん省エネの工夫はするが、いつ開場になるのか分からないままで、冷やし続けることになる。

 冷蔵倉庫は一例。それぞれの築地関係者が移転に向けた設備投資やリース契約を行っており、個々の業者が様々な負担増を強いられている。

 ――小池知事の「延期理由」は、その後の新たな問題の発覚で一層支持が高まったようだが。
 伊藤 あくまで「移転延期」は東京都の都合によるもの。民間へしわ寄せするのは道理に合わない。「移転延期」によって被った損害は東京都にしっかり責任を持ってもらうというのが基本的な我々のスタンスだ。

 ――新市場への移転に見通しが立たない中で、当面は築地市場を使い続ける以外ない。
 伊藤 そうなれば、また、新たな問題も出る。例えば老朽化している低温設備があり、築地を使い続けるとなれば新たな修理、補修が必要となる。こういう費用は東京都に持ってもらいたいと思う。

 ――小池知事は延期に伴う支援措置については相談を検討すると表明したが。
 伊藤 補償問題は今後、避けて通れない重要事項になることは間違いないが、それよりも最も大切なことは都民に安心安全な食品を供給し続ける体制をしっかり構築することだ。

 安心安全が担保されなければ、豊洲に来いと言っても行けるものではない。築地関係者だけでなく、消費者にも納得いく形で新市場の開場を迎えなければならない。食品の安心安全の確保が最優先課題だ。

 ――この問題は連日、マスコミに報道され、その都度、築地市場協会の会長としてコメントを求められている。
 伊藤 取材攻めの日々だが、今は極めて後ろ向きの議論だ。早く本来の議論に戻さなくてはならない。

 長年、移転問題に携わっている中で、東京都は予算や規則、議会に対する目配りはすごいが最も大切な食品の衛生感覚が欠落しているとの印象をぬぐえない。個人的には(断片的に取り上げる)テレビによって「怒っている人」のイメージがついたようだが、我々が求めるのは、あくまで都民の食料供給を担う「安心安全で魅力ある市場」だ。

 最近は町で見知らぬ人から「テレビで見ています。頑張って下さい」「お体に気を付けて」といったエールを送られる。一日も早く都民の皆さんに安心していただけるようにしなければならない。

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