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この人に聞きたい:第629回
(週刊水産タイムス:18/03/12号)

国際標準の水産エコラベルに

(一社)マリン・エコラベル・ジャパン協議会 会長  垣添 直也氏

(かきぞえ・なおや)日本水産前社長。日本冷凍食品協会会長、日本冷蔵倉庫協会会長などを歴任。東京水産大学(現東京海洋大)製造学科卒。

東京五輪へ対応、輸出促進も視野に

 2020年東京五輪・パラリンピックが近づき、水産物輸出においてもエコラベル認証が求められる中で、にわかに認証取得の動きが盛り上がってきた。水産エコラベルが取り上げられる機会が増えており、MELの垣添直也会長は「この動きを捉えて、社会の認知度向上に積極的に取り組む」としている。

 「持続可能な水産物」に関して、現在、世界的に合意された定義は存在していない。これを国際的に受け入れられるよう表現するなら「現在および将来の世代にわたって最適利用できるよう資源が維持されている水産物」とするのが妥当と思われる。

 「水産エコラベル」とは何か。環境や生態系、資源の持続性に配慮した方法で漁獲、養殖、加工・流通された水産物に対して、第三者による審査、認証を行い、ラベル等で表示することで、商取引におけるトレーサビリティを約束するとともに、消費者が選択的に購入できる制度――MELはそう認識している。
 日本では水産物の持続的利用のため資源管理と自然に調和した増養殖推進を謳った水産基本法が2001年に制定された。その後、大日本水産会に「マリン・エコラベル・ジャパン」が設立(07年)。16年には一般社団法人マリン・エコラベル・ジャパン協議会となり、国際標準に準拠する新たな仕組みを構築する活動を開始した。

 2020年オリンピック・パラリンピックの食材調達基準への対応や、日本の政策的課題となっている「水産物の輸出促進」が、そこにある。

 MELが国際的に認知されるために、国際標準プラットホームであるGSSI(世界水産物持続可能性イニシアチブ)の承認を得るとともに、審査・認証の信頼性を高めるため、認証機関である公益社団法人日本水産資源保護協会に対し、国際的認定機関である「日本適合性認定協会(JAB)」の認定取得を求める。

 その結果、日本の自然と水産業の多様性(生物的、産業的、食文化的)の特長をできる限り反映させ、日本の食文化を守り、日本の水産物の国際的評価を高める仕組みとすることが大切である。

 MELは、水産エコラベルを水産物に関するもう一つの価値と認識する。すなわち、@食料あるいは栄養源としての価値(水産物そのもの)A生活あるいは食事を楽しむ「コト」としての価値(六次産業化)B特別な「モノ」としての価値(ブランド化)――である。これから水産エコラベルは、社会的価値としてSDGs(持続可能な開発目標)実現に参加する。

 MEL認証には生産段階認証(漁業、養殖)と、流通加工段階認証の2種類があり、いずれもFAO(国連食料農業機関)のガイドラインの原則、考え方を適用している。つまり、確立された管理体制の下で漁業が行われていること。対象資源が持続的に利用される水準を維持していること。生態系への保全に適切な措置がとられていること。この3つが基本要件となる。

 MELは最良の科学的根拠に準拠し、有効性が客観的に実証されている漁業者の知識についても科学的根拠とみなす。小規模漁業に対しても適用可能である。

 一方、養殖認証規格の基本的要件として、@養殖生産活動の社会的責任A養殖対象水産動物の健康と福祉に対する配慮B食品安全の確保C環境保全への配慮――を4つを原則とする。

 MELの認証有効期間は漁業5年、養殖業3年、流通加工3年となっており、有効期間中は年次審査がある。審査費用は本審査(初回審査)が生産段階50万円〜200万円、流通加工段階が30万円〜50万円、年次審査は初回審査の半額。予備審査はなく、事前相談は無料で受け付けている。MEL認証水産物は規定に沿って商品にロゴマークをつけることができる。

 今後、GSSIの承認、JABの認定のメドが立ち次第、MELの考え方と新規格に対して理解を得られる事業者を認証するための活動を開始する。多くの皆様に会員となっていただき、協議会としての存立を固めたい。

 2019年春までに、組織としてのガバナンス体制を整えるとともに、国際認証・認定を取得し、国内、海外で認められる水産エコラベルとしての地位を確立したい。

 生産者、流通加工業者、消費者の役に立つ水産エコラベルを目指す。
 (2月20日に行われた第15回シーフードショー大阪でのセミナー講演より)

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