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この人に聞きたい:第858回
(週刊冷食タイムス:22/11/08号)

食品残さ再生装置を開発

ASTRA FOOD PLAN(株) 代表取締役社長  加納 千裕氏

(かのう・ちひろ)ロック・フィールドや榮太樓總本舗などを経て父親が経営していた会社で過熱水蒸気の技術を学び、2020年8月ASTRA社を設立。21年「過熱蒸煎機」開発。1987年生まれ、35歳。女子栄養大栄養学部卒。

「かくれフードロス」解決へ

 食品工場が排出する加工残さなどを「かくれフードロス」と呼んで食品粉末にアップサイクルする事業に取り組む。過熱水蒸気の技術を高度に進化させた「過熱蒸煎機」(登録商標)が主役だ。

 ――過熱水蒸気の発生構造が独自だ。
 加納 飽和水蒸気ではなく、水から直接、過熱水蒸気を作り出します。セラミックを焼石のように熱し、水を噴射すると一気に数百度のスチームが発生する仕組みです。ボイラーレスで複雑な配管もないため熱効率が高く、エネルギー費用を抑えます。

 ――熱風を併用して乾燥殺菌処理する?
 加納 そうです。ドライヤーに例えると、熱風だけを当てるのが従来型。マイナスイオンのヘアドライヤーが「過熱蒸煎機」。熱風だけでは枝毛のように食品に対するダメージが大きくなってしまう。
 「過熱蒸煎機」は食材を蒸気で包んでやさしく乾燥するイメージです。酸化を抑制しながら乾燥するため、変色や風味の劣化も防ぎます。乾燥と殺菌を同時に行い、わずか10秒程度で高品質の粉末に仕上げることが最大の特長です。

 ――今年9月にラボ施設が稼働した。
 加納 機械を導入していただくためには粉末の用途開発が必要です。そこで食品メーカーや外食チェーン、農産品の生産者らとテストを繰り返しています。これまでに玉ねぎの端材や白菜の芯、えびの殻など70種類を超える食品残さの粉末化に成功しました。

 ――どのような使い方を?
 加納 食品残さはそのままでは菌数が高いですが、「過熱蒸煎機」で乾燥殺菌すれば常温で1年以上は保存できます。過熱水蒸気の効果でうま味が増したり、栄養価を残したりできることもわかりました。そこで、大根の葉っぱの粉末をふりかけに加工したり、玉ねぎはパンやパスタに練りこんだりすることを考えています。

 ――出口戦略がカギになる。
 加納 当社は、機械を導入して粉末を製造する企業と、粉末を活用して商品開発する企業の橋渡し役を考えており、毎月10社以上とテストしています。コストをかけて廃棄していた食品残さをアップサイクルし、販売できれば粉末を作る側にメリットが出ます。使う側も高品質な食品粉末を安く仕入れることができます。両社が儲かる仕組みを構築することで循環型システムの持続可能性は高まります。そのためにもこの数年は研究開発に集中し、成功事例を早期に作り上げることをめざします。

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