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この人に聞きたい:第927回
(週刊冷食タイムス:24/04/02号)

19坪の工場から始まった日本の冷凍ピザ

ピザ協議会 名誉会長  大河原 愛子氏

 

チルド売場に着目/協議会設立、日本初のピザ市場調査

 ピザ協議会は今年で設立30周年を迎えた。その記念祝賀会における大河原名誉会長のスピーチは次の通り。

 私個人の経験と、日本のピザの歴史を話させてもらいます。
 当社デルソーレは1964年、ちょうど60年前にJ&Cカンパニーとして設立しました。当時、ピザはまだあまり知られていなかったので大変苦労しました。19坪の小さい部屋でピザを手作りしていました。
 外食産業はまだ発達していなかったので、小さなスナックやバーにピザを売りました。1件5枚、10枚程度ですが、一生懸命赤坂や銀座の周辺を歩き回りました。
 当時日本人の年間チーズ消費量は50g。ピザなら1枚くらいの量です。今は約3kgです。このようにチーズの人気が高まったのは、やはりピザの発展によるものと思います。
 もちろん、チーズ業者もすごく頑張りました。昔、聞いた話ですが、当初輸入チーズが売れなくて、古くなった在庫を東京湾に捨てたといいます。「だから当時の東京湾の魚がおいしかった」と言う逸話も残っています。
 悲しい話ですが、皆さんこのようなユーモアで乗り越えてきたと思います。
 もちろん、大手スーパーチェーンはまだありません。外国人が買い物をしていた紀ノ国屋で冷凍ピザを販売してもらいました。
 チーズピザは170円、サラミピザは210円でした。当時の1ドルは360円。大卒初任給は1万8千円から2万円でした。ピザは高級品でそう簡単には買えない時代でした。
 19坪の工場には10人が働く製造ラインがあり、冷凍ピザだけを作っていました。小さなアイスクリームストッカーで凍結していました。
 ところがある日、急に大量のオーダーが入り、凍結が間に合いません。仕方がないので冷凍せずに紀ノ国屋に納入したところ、当たり前のことですが大変怒られ、取り引きを切られたというエピソードがあります。
 スーパマーケットは70年代に生まれ、80年代は競争の時代に入りました。それでも冷凍ピザの売場はまだ小さい上にメーカーの競争が激しく、ニチレイ、ニチロ、明治、雪印、味の素などの大手メーカーはみな冷凍ピザを発売していました。
 当社のような規模では競争に入れず、どうしようかと悩み、毎日スーパーを見て回り研究しました。
 ある日チルドの売場を見て気が付きました。ハムソーはあるけどそのほかに魅力的なアイテムは少ない。「そうだ、冷食で競争できないならチルドで売ればいい」と考えました。
 しかし、チルドは物流の問題があります。毎日配送しなくてはいけません。
 考えた末、既にルートを持っているハムメーカーにアプローチしようと、伊藤ハムに戦略的パートナーシップを提案しました。当社が伊藤ハムのブランドで作りました。伊藤ハムは既存のルートにプラスオンする形でスーパーに売ることができました。
 大成功でした。
 そうなると次々に他のハムメーカーもピザを売るようになり、冷凍よりチルド売場の方が大きく広がりました。
 次は自社ブランドを伸ばすことを考えなくてはいけません。しかし独自のチルド売場は持っていませんでしたし、市販のノウハウもありませんでした。
 そんな時、たまたま片岡物産の社長にお目にかかる機会がありました。紅茶などいろいろな仕事を手掛けている会社です。子会社に東京デリカがあり、ピザを作ってデルソーレブランドで売っていました。片岡物産にとってはノンコアビジネスですので、譲っていただけないかと相談し、東京デリカを買わせていただくことになりました。デルソーレの名はブランドとして使っていました。
 当社は数年前に社名とブランドを統一しました。

日本の創造性は世界をリードしている

 30年前は十数社のピザメーカーがありました。業界を伸ばすためには協会が必要ではないかと考えました。当時、冷凍食品新聞社のサポートとして山本純子さんもお手伝いしてくれました。
 最初の目的はマーケット調査でした。規模がわからず、毎年の伸び率を知ることもできない状態でした。減っているのか増えているのかを知ることは大変重要でした。
 調査を開始したおかげで30年前のピザマーケットは1770億円ということがわかりました。それが2022年には約3278億円になりました。恐らく近いうちに5千億円を達成するでしょう。これは皆様のおかげです。
 30年前はまだピザの知名度が低く、協会としてはPR活動に力を入れ、11月20日はピザの日に定めました。イタリアのマルゲリータ王妃の誕生日であり、ストーリー性があります。
 いろいろなキーワードも作りました。「ピザはバランス栄養食」、「ピザは世界の人気者」など発信しました。
 日本のピザはクリエイティビティで世界をリードしていると、私は思います。
 昔、メーカーのピザのトッピングはサラミ、ペペローニ、イタリアンソーセージくらいでした。日本では消費者のニーズによりタンドリーチキンとかツナ&コーンとか、最近ではトリュフやフォアグラもトッピングするなど、より面白くより期待させるようになっています。これは日本人のクリエイティビティのおかげです。今はアメリカやヨーロッパにも少し広がっていますが、発祥地は日本です。
 今後も皆様の熱心な研究とクリエイティビティに期待してまだまだ伸ばしていただきたいと思います。
 これまでの30年間、ご協力本当にありがとうございました。また次の30年、よろしくお願いします。

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