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業界交差点

この人に聞きたい:第1052回
(週刊水産タイムス:26/10/26号)

変化に合わせた漁港漁場整備が必要

水産庁漁港漁場整備部 部長  中村 隆氏

 

令和9年度水産基盤整備事業/対前年比130%思い切った予算要求に/長期計画初年度重要な予算に

 令和9年度水産基盤整備事業予算は新たな漁港漁場整備長期計画の1年目の土台となる重要な予算であるとともに、全国各地の事業推進に向けて、物価上昇などを踏まえた予算確保と支援策の拡充が求められている。これを背景に、概算要求では対前年度比130%となる959億7800万円を計上。さらに、国土強靱化やTPP等関連政策大綱を踏まえた経費については事項要求を行う。水産庁の中村隆漁港漁場整備部長に、現行の長期計画の進捗と次期長期計画、それを踏まえた9年度予算のポイントについて聞いた。
     ◇
現行の長期計画「概ね進捗が図られている」

 ――まずは現行の長期計画の進捗について聞きたい。
 中村部長 7年度実績値において、成果目標に対して「概ね進捗が図られている」状況。進捗の状況は「概ね」「十分に」「とどまっている」という表現で統一しているが、令和6年度にあった「とどまっている」は7年度にはなくなり、成果目標に対して実績値が徐々に上向いてきている。
 特にハード整備は完成までに時間を要するため、3カ年では低空飛行に見えるが、後半の伸びに期待ができる。
 例えば地震・津波発生時における水産業の早期回復体制の構築については、6年度には遅れていた岸壁整備などのハード対策が加速し、概ね進捗が図られている状況。今後さらに伸長する見通し。

 ――そのほか、注目すべき項目は。
 中村部長 流通拠点漁港における衛生管理体制については、荷さばき所の整備などが概ね順調に進捗している。一方、記録保持などのソフト対策への理解を拡大する必要がある。
 漁場整備による水産資源の回復や生産力向上については、6・5万tの水産物を増産するという目標値に向けて、魚礁や増殖場の整備が着実に図られている。
 海業の取り組みについては、7年度実績値が382件であり、十分な進捗状況と言える。 

 ――現長期計画のこうした進捗状況を踏まえ、新たな長期計画の策定が進められている。
 中村部長 自民党の漁港漁場漁村整備促進議員連盟の検討委員会で取りまとめて農林水産大臣に提言していただいた内容を踏まえ、議論を進めている。
 4本の重点課題のうち、「海洋環境変化への適応」が一番のキーワードとなる。

 ――水産基盤整備でどう対応していくのか。
 中村部長 現在、海水温の上昇などにより魚種の変化が起こっている。例えば北海道の斜里漁港では、サケの定置網にブリが多くかかるようになり、選別作業の負担増大や、作業時間が伸びて鮮度が劣化したことによる魚価の下落が課題となっている。
 そこで、屋根付き岸壁を延長したり、荷さばき所を拡大することで、作業効率アップと鮮度確保につなげる。ブリの食文化がなかった北海道では、これまでは流通加工にのせる手立てがなかったが、ブリにもしっかりと価値をつけていくことが理想だ。こうした変化に対応していくための動きに合わせ、漁場漁場整備も変わっていかなければならない。

流通拠点を圏域一帯で集約・再編

 ――2本目の重点課題として、水産業の拠点形成による生産力・競争力の強化も掲げている。
 中村部長 漁業者・市場関係者の人手不足や輸送力不足、生産・流通コストの増大が指摘される中、地域漁業の協業化や法人化、生産・加工・流通機能の再編強化で対応していく。
 具体的には、別々で整備するのではなく、圏域一帯で漁港機能を再編・強化しながら整備する。物が集まると加工場の立地もしやすくなり、効率的な投資にもつながる。また、集約される漁港は海面養殖や陸上養殖、海業などにも有効活用してもらうと一石二鳥になる。用地の上に屋根をかけたり取水排水といった付属施設の整備に対する要件緩和を行ったりと、空いた用地を活用しやすくなるよう工夫している。

増大する災害リスクへの対応を強化

 ――3本目の災害リスクとインフラの老朽化対策については。
 中村部長 施設が古くなり維持更新が必要になっているが、コストがかかる。地域の将来を見据えて計画的に対策を進めるために、再編・強化に伴う施設や機能の統廃合、規模適正化に取り組みたい。
 災害については、特に南海トラフ、日本海溝・千島海溝周辺の海溝型地震の発生が懸念されている。また、気候変動に伴い台風や低気圧、豪雨も激甚化しており、こうした災害リスクへの対応を強化してく。
 今年7月にも熊本地震が発生し、漁港施設も多数の被害が発生した。漁業者は、不便を強いられながらも漁業を再開している状況だ。一方、能登半島地震の際にはかつてない大きな隆起が発生し、そもそも船が出られなかった。こうした教訓から、条件不利地域の特性を踏まえた物資の輸送拠点としての機能強化と孤立対策が求められている。

海業を波及させるフェーズ

 ――4つ目の柱は海業。にぎわい稼げる漁村をめざし、海業の拡大が求められている。
 中村部長 海業については、制度、予算、情報提供、体制整備を組み合わせて推進している。こうした取り組みにより、海業500件に向けて着実に積み上げている。
 今はようやく芽が出たところ。今後は花を咲かせなくてはならない。制度や予算の枠組みは作ったので、全国でどんどん使ってもらい、海業の取り組みを波及させていくフェーズに入っていく。

 ――「海業振興総合戦略(仮称)」の策定を進めている。
 中村部長 海業における民間投資の活用や、水産業を支える取り組みであること、漁業者の所得向上や雇用創出といった、海業の目的や趣旨を共有し、戦略的に取り組んでいくための指針。
 次のフェーズに行くために、国としての考え方をしっかりと示した上で、各地域で特色を生かした海業を戦略的に進めてもらう。地域のみなさんが海業への一歩を踏み出しやすくなるよう支援する。
 年度内に仕上げ、来年度初めに公表する。

 ――こうした次期長期計画の方向性を踏まえ、9年度の概算要求を提示した。
 中村部長 次期長期計画の内容を盛り込み、要求している。4月に閣議決定した長期計画と水産基本計画と同時に9年度予算がスタートする形だ。
 今回は、上限のない「強く豊かな日本」投資枠を活用しつつ、対前年度130%となる959億7800万円という思い切った要求をした。これに加え、国土強靱化やTPP関連政策大綱を踏まえた経費については事項要求で積み上げていく。
 「強く豊かな日本」投資枠は約1割にあたる92億3500万円。国内トップクラスの大規模流通拠点漁港の施設整備に充てる。日本有数の流通拠点漁港にさらに投資することによって需要を喚起する。

「ニーズに合った支援を提供する」

 ――全国漁港漁場大会が28日に開催され、9年度予算獲得に向けた決議を行う。関係者へのメッセージをお願いしたい。
 中村部長 海洋環境変化に対応した漁港漁場整備に変えていくことが求められる中、常に世の中のニーズに合った支援を提供していく。長期計画の初年度である9年度予算は非常に重要。計画をスタートする年にふさわしいものとなるよう、頑張っていく。
 そして、頻発する地震や豪雨による災害のリスクも高まっている。少しでも安心安全を取り戻すために漁港漁村の整備を促進し、水産業と漁村の暮らしを守っていきたい。
 全国漁港漁場大会では、全国から関係者のみなさんが集まり決議を行うが、我々の後押しをしていただくものと考えている。我々も要望に応えられるよう全力を尽くす。ぜひ応援をお願いしたい。

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