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今週の一本

●中国悪者論に与せず 越川 宏昭(週刊冷食タイムス:08/03/04号)

自信をもって中国製品の安全を訴えよ

 中国製冷凍餃子の農薬中毒事件後、中国製冷凍食品への信頼が大きく揺らいでいる。しかし中国生産の安全確保のために、冷凍食品メーカーの多くは万全の体制を構築してきたのではなかったか。世間の関心が集まっている今こそ中国製冷凍食品の安全性を謳う好機ではないか。

 ごく一部の農薬混入事件が起きたことで、あたかも中国製の冷凍食品すべての安全性を疑うがごとき言動が幅を利かせている。まるでマスコミの中国バッシングである。それに怖れをなして、「中国産」を売場やメニューから一掃しようとする動きも流通やユーザーの一部で起こっている。日本人の悪しき習性、「事なかれ主義」である。理にかなわなくても流れに身を任せる、マスコミの空気を読んで安易に妥協してしまう。残念なことである。

 某大手メーカーのトップは「現状、消費者はネガティブな情報には敏感に反応するが、ポジティブな情報は耳に入らない。だからおとなしく嵐の通過を待て」と社内に指示しているらしい。
 確かにそのほうが無難に過ごせるかも知れない。しかし、冷凍食品全体のことを考えるともっと積極的に安全性を訴えるべきではないか。こういうときこそ中国でどのように冷凍食品を生産しているか、つまり安全性を確保するためにどれだけ費用と手間と技術と従業員の意識付けを行なっているか、率直に訴えるべきである。
 冷凍食品を日常的に使い続ける消費者にしてみれば日々不安を抱きながら使っているに違いない。こういう冷凍食品のヘビーユーザーに対して、頭を低くして逆風の通り過ぎるのを待つような対応は不親切、少しでも不安を払拭する対策を講じるべきだ。

 日本企業が中国企業とがっぷりと取り組んだ冷凍食品工場では日本国内の工場以上に安全管理を徹底している。それは本紙が10年以上にわたり実施している中国の冷凍食品工場の「定点観測」において確認済み。
 中国製品を忌避する「チャイナフリー」を標榜し、「国産回帰」を叫ぶ向きがある。しかし、それは実現可能なのか。現状、食料自給率が40%を切っているにもかかわらず、「国産原料を国内加工で」というのは非現実的であろう。しかも国産になればコストは原料価格、人件費、光熱費などすべてが大きくアップする。物流費に関しても中国から日本への輸送費より国内移送費のほうが高くつくことはよく知られている。国内生産だからといって物流費が節減できるわけではない。
 万全の安全体制で農産物、調理冷凍食品を中国で生産してきたにもかかわらず、「中国製冷凍食品は駄目。国産でもってこい」という無法なユーザーがいる。消費者が安全性を重視していることは確か。だが、そこには「リーズナブルな値段で」という但し書きがつくことを忘れてはいけない。そういったニーズに応えるためには生産拠点として中国は不可欠である。
 今こそ日中の関係者が協力して一層の安全性の向上に努め、それを自信をもってユーザー、消費者に説明していくべき時である。

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