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今週の一本

●ニッスイ、陸前高田に種苗生産施設  松田陽平 (週刊水産タイムス:25/11/10号)

ふ化施設活用/サーモン養殖を事業化

 ニッスイ(東京都港区、田中輝社長)は、2023年から岩手県陸前高田市で実施してきたサーモンの試験養殖について、広田湾漁業協同組合(岩手県陸前高田市、砂田光保組合長)が保有する同市内のサケ・マスふ化施設の一部を改修したサーモン種苗生産施設「ニッスイ気仙川養魚場」をこのほど新設した。同市、同漁協と協力して、陸前高田市でのサーモン養殖事業などに種苗を供給する。

「広田湾漁協 気仙川第3ふ化場」の全景
(青色の円形水槽10基でサーモンの種苗生産を行う)
陸前高田市広田湾で養殖されたサーモン
 陸前高田市でのサーモン養殖については、安定した生産と出荷のめどが立ったため、11月1日からグループ会社の弓ヶ浜水産(鳥取県境港市、鶴岡比呂志社長)の事業として運営を開始した。2030年に陸前高田で約2500tの生産を計画している。

カギ握る種苗生産施設へ積極投資

 2030年の長期ビジョン「GOOD FOODS 2030」を掲げるニッスイグループは、持続可能な養殖事業を推進し、国内でのサーモン生産量を拡大し、30年に約1万tの生産をめざす。そのうち約7000tは三陸エリアでの生産を計画している。
 増産に向けてカギを握るのが種苗生産施設で、現中期経営計画において種苗生産施設への積極的な投資を行う方針。
 広田湾漁協が所有しているサケ・マスのふ化場は、シロザケの放流事業を長年担ってきた。シロザケふ化放流事業の休止期間(5〜11月頃)を活用し、既存の取水設備などをサーモン種苗生産に転用できるよう改修。ふ化場の隣接地に大型円形水槽を10基新設し、生産能力と作業効率を高めた。
 「気仙川養魚場」は既存資源を新たな形で活用する取り組みとして注目されている。

地下水利用で環境変化に強い仕組み

 東北地域にはサーモンの種苗生産業者が多く存在するが、近年は気候変動の影響などにより経営環境は不安定になりつつある。
 従来の河川水を利用する養殖方式では水温や水量の変動リスクが高まっている。増産対応と将来的な環境変化への備えとして、今回改修した施設では豊富な地下水を揚水して利用できる構造を採用し、環境変化に強い仕組みとなっている。
 同社は「自社で種苗を生産することで、質・量の安定を実現することができ、さらなる生産性向上を図る。また、気仙川養魚場の稼働を契機に自治体と地域の漁協と協働し、ふ化場の有効活用を通じて種苗生産体制の強化と生産拡大を進めていく」としている。
 同養魚場で生産した種苗は陸前高田の海面漁場へ出荷される。

安定出荷できる段階となり事業化

 ニッスイグループは、鳥取県境港市で開始した国内サーモン養殖事業の拠点を新潟県佐渡市、岩手県大槌町、同県陸前高田市と徐々に増やしてきた。
 岩手県には2020年進出し、大槌町で試験養殖を開始。22年に事業化して生産を拡大している。
 陸前高田市では23年から広田湾漁協と共同で漁場環境の調査や生産方法の検討を目的に試験養殖を開始。このほど安定出荷が見込める段階となり、事業化を決めた。これを受け、岩手県から区画漁業権の免許を取得し、同漁協の管轄海域内での本格操業と養殖事業の拡大が可能となった。
 さらに岩手県大船渡市の越喜来(おきらい)漁協(舩砥秀市組合長)と共同でサーモンの試験養殖に着手することを今年10月発表した。

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